第6話 小説



 その晩。

 郁斗はパソコン前に座ってページを開いてみた。



『紳士と淑女の小説投稿サイト――ルナティック・ムーン』



 画面をクリック。

 いきなり年齢確認画面が表示された。


「十八禁じゃねーかっ!」


 郁斗は部屋に向かって一人突っ込んだ。

 もう、嫌な予感しかしない。

 投稿サイトに入室し、翠の言っていた作者ページに跳ぶ。



 『高良瀬みどり』のページです。



 投稿小説を確認。



 『美少女転生――美少女生徒会長が異世界で男たちに無双される』

 『黒髪美少女生徒会長痴態悶絶』

 『美少女姉妹監禁調教日記』

 『………………』



 一瞬、何を見たのかわからなかった。

 ややあって、頭を抱える。

 が、翠にわかったと答えた以上、読まないわけにもいかない。

 そのうちの一つをクリックする。

 トップページが現れた。


「百万文字もあんのかよっ! ってゆーか、ブックマーク一人かよっ!」


 アクセス数とか、もはや見る気にはなれなかった。

 しぶしぶ小説を開く。



『……「嫌よ嫌とと言っても体は正直だな女。どおれ。その体に聞いてやろうか」男は嫌がる黒髪美少女生徒会長の体を押し倒してその濡れそぼった秘蜜に自分の固い怒張を無理やり押し込んでいやがる美少女に突っ込む。「いやあ。やめて」男の物を突っ込まれて美少女は何度も何度も出し入れされて突っ込まれながら感じてくる。「やっぱり体は正直だったな、女。もう腰を振ってやがる」美少女は押し寄せる快感に抗えずに腰を振り男の物を受け入れて喜びに腰を振る「ああきもちいいもっとしてもっとして」………………』



 郁斗はページをめくる。

 次のページも次もページも。

 下手な文章で下手な描写が延々と続いていた。


「改行ぐらいしろよっ! ってゆーかこんなのが百万文字も続くのか?」


 再び頭を抱えた。

 数行読んだだけで激しい憔悴が襲ってきた。

 これ以上読む気にはなれなかった。



 感想ページにはアクセスがあった。



 『いつ読んでも素敵な文章です。楽しみにしています。ただ、地の文にもう少し行動描写を入れるともっとわかりやすくなると思います。

 たかさせや より』


 『主人公の美少女の感情が豊かに表現されていると思います。ですが、ヒロインのリアリティが今一歩です。破天荒な少女に一つまみの『塩』を振りかけてはどうでしょうか。

 たかさせや より』


 感想ページには、この『たかさせや』という人物からの文言がびっしりと詰まっていた。

 というか、それ以外には、ない。

 郁斗は、翠の書いた投稿小説の前で……無言で顔を覆った。


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