28. やっぱり平和がいい

 色んな国の音楽を聴いていると、どんな場所・時代にも共通する要素があると感じます。お金持ちになりたいとか毎日が退屈だとか、誰々さんへの恋心とか、近しい人の死を悲しむとか……。もちろん状況は違うけれど、みんな根っこはそんなに変わらない人間なんだなあ、なんて思うわけです。

 だから、世界がこんな状況になると改めて思います。やっぱり、平和がいい。


 そこで今回は、平和を愛し戦争に反対する(またはそういう曲だと言われている)音楽を3曲取り上げたいと思います。



1. United Support of Artists for Africa「We Are The World」(1985)

 まずは平和を歌い上げるこの定番曲。Michael JacksonとLionel Richieが作詞・作曲を担当した名曲で、アフリカの飢餓を救済するチャリティーソング。リアルタイムでこの曲を知った人たちは、豪華な参加メンバーに驚いたでしょうね。 Stevie Wonder、Cyndi Lauper、Diana Ross、Ray Charles……! 総勢45名の錚々たる顔ぶれ、気になる方はぜひお調べになってみてください。

 また、2010年には「We Are The World 25 Years for Haiti」として、ハイチ地震による被災者支援のために再レコーディングされています。Justin Bieber、Usher、Céline Dion、Mary J Bligeなど、多方面で活躍し幅広く愛されるスターたちが参加しています。このタイミングで初めて聴いた方も多いでしょう。

 どれだけ時代が巡っても、この曲のメッセージ性や音楽の力は凄まじいものがあります。曲の構成はさほど複雑ではなく、サビのリフレインが印象的。メインボーカル、コーラス、どの音を聴いても伝わる情熱。思い出すだけで涙腺が緩んでしまいます。

 意訳ですが、「今こそ世界が一つになる時だ」「これは本当だよ、わかるよね。僕らには愛が必要だ」「僕らは輝く日々を作れるんだ」といった、ストレートかつ普遍的な歌詞が並びます。曲の成り立ち上、どうしても“与える者”と“与えられる者”という関係性が滲み出てはいますが、この曲を聴ける環境にある人達に、“自分たちの行動が世界を変える”と気付かせるには十分なメッセージが詰まっています。

 差し伸べる手が暴力ではなく、目の前の人を暖めるものであればいいのに。この曲を聴いていると、しみじみそう思います。



2. The Killers「All These Things That I've Done」(2004)

 私が初めてThe Killersを聴いたアルバム、『Hot Fuss』に収録された一曲。CMをはじめ色んな場面で使われることがあるので、曲名やバンド名を知らなくても、耳にしたことがあるかもしれません。特に耳に残るのはコーラス。ざっくり訳すと「意思(soul)はあるけど、兵士(soldier)じゃない」と連呼しているのが特徴的。

 どうやらこの曲、アメリカのテレビ司会者/MTVのVJ、Matt Pinfieldのことを書いたものだそうです(※)。Matt Pinfieldは、イラクから帰還した傷病者やPTSDに苦しむ音楽家などのメンタリングを行っていた経歴のある人。(The Killersとの面識は、バンドが有名になる前からだとか。)印象的なコーラス、「意思はあるけど、兵士じゃない」はメンタリングについて歌った一説だとか。

 この曲自体は、どちらかというと宗教的なニュアンスを感じるもので、「にっちもさっちも行かなくなった、神様助けて!」という内容に聞こえます。ですが、先述のコーラスの裏話や、アルバム『Hot Fuss』のリリースがイラク戦争の翌年ということも考えると。やはり、そこに戦争に反対する彼らの意思が、滲んでいるような気がします。


※参考(URLは貼れないので省略しています)

Soldiering on: MTV VJ Matt Pinfield opens up about near-fatal accident, song the Killers wrote for him



3. スピッツ「愛のことば」(1995)

 最後はこの曲。1995年のアルバム『ハチミツ』に収録された名曲です。「ロビンソン」や「涙がキラリ☆」が入ったアルバム……と言えば、当時を知らずともピンと来る方が多いのではないでしょうか。

 「愛のことば」も、直接的に曲の中で“平和”や“反戦”をうたっているわけではありません。ただのラブソングとして聴き流そうと思えば、そう出来る曲です。

 しかし、一度MVを見ると印象は一転(YouTubeのスピッツ公式チャンネルで見られます)。撃ち抜かれる花瓶、人形を踏みつける車のタイヤ、頭に袋を被せられ椅子に拘束された誰か……。不穏な映像が、スピッツの美メロディに乗って流れていきます。バンドメンバーが演奏している場所も荒野で、草木もないような場所です。

 さらに、歌詞を見てみると、深読みしようと思えばミサイルの描写に思える部分もある。この歌の主人公は悲惨な環境の中で「愛のことば」を探していることが窺えるのです。元々、スピッツの歌詞は詩的・抽象的なものが多く、ファンの間で考察されている曲も多くあります。「愛のことば」はその代表例であり、かつ最も広範囲に向けた願いを込めた曲だと言っても過言ではありません。

 どんな状況でも、愛のことばを探すのが人間であるならば。やっぱり、その足元は穏やかで、平和な世界がいいですね。



 この状況が一刻も早く収まり、傷ついた人たちの心身が早く穏やかになることを、願っています。

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