20. 音楽でお月見をするならば

 秋は月が綺麗ですね。暦がお月見だ名月だと騒がなくなったとしても、寒くなって空気が澄んでくると、夜空を見上げるのが楽しくなります。

 さて、今回はいつもと少し趣向を変えて、「月/Moon」が題名に入っている好きな曲をいくつか取り上げたいと思います。天体観測のお供にも、空が見えない夜にもおすすめな曲を選びました。



「今宵の月のように」 エレファントカシマシ

 まずは言わずと知れた名曲から。今では宮本のソロカバープロジェクトでの活動が目立ちますが、やはり私はエレファントカシマシというバンドが好きです。

 「月」って儚く淡いものとして扱われる印象がありますが、この曲は人生の応援歌。月が人生の希望の象徴として歌われているのがとても美しいなと思います。



「月に負け犬」 椎名林檎

 2000年リリースのアルバム「勝訴ストリップ」に収録されている曲で、椎名林檎が18歳の頃に作った曲。

 引用は避けますが、最初の歌詞の一文に撃ち抜かれて以来、未だに「ほんと、“月に負け犬”のあの歌詞の通りだよな……」と思うことが多いです。あの頃の椎名林檎との出会いを、人生を通して引きずっていくのかもしれないなと思う曲。



「月たち」 公衆道徳(空中泥棒/Bird's Eye Batang)

 韓国の宅録アーティスト、2018年に名義を空中泥棒に変えた公衆道徳。2021年放映開始のアニメ「Sonny Boy」のサントラにも参加しているので、名前を知っている人も多いかもしれません。(まさかアニメで曲が使われるなんて!とびっくりしたのを覚えています)

 この曲は2015年にリリースされたファーストアルバム『公衆道徳』収録の曲。宅録らしいベッドルームサウンド、アンビエント、Lofi、インディーロック/ポップの雰囲気と浮遊感が楽しめる名盤だなあと、今聴いても好きなアルバムです。

(2022年にさらに名義を変えて、Bird's Eye Batangの名前でアルバムをリリースしています)



「Countless White Moons」 Aspidistrafly

 シンガポールを拠点に活動する男女ユニット、アスピディストラフライ。柔らかなボーカル、空間から生まれたようなピアノ・ギターが織りなす楽曲はどれも聴いていてうっとりしてしまいます。

 この曲は、まさに「月」のイメージにぴったり合った、空に浮かぶ白い月を眺めているような心地になる音色。月がスピーカーだったら、こんな曲が流れて来るのかもしれません。



「Moon」 KNIGHTSTOWN

 UK出身のMichael Astonによる、エレクトロニカ・ボーカルプロジェクトのKNIGHTSTOWN。2018年にリリースされたアルバム"KNIGHTSTOWN"は、本当に美しいアンビエント・エレクトロニカで、一目惚れならぬ一耳惚れでした。

 そのアルバムに収録されたこの曲は、「月」の静かなイメージに合った楽曲。ボーカルのファルセットの美しさはもちろん、ひんやりしているのに暖かい電子音が魅力です。

 月明かりのような静かな輝き、雪が降り積もるようなピアノ・弦楽器の音色を聴いていると、体の輪郭が消えてなくなってしまうような感覚を味わえます。ぜひ、お好きなヘッドフォンを装着して、ベッドで聴いてみてください。



「UNDER THE MOON」 Claptone

 ドイツのテクノ・ハウスDJ、Claptoneが2018年にリリースしたアルバム"Fantast"に収録された楽曲。私はこのアルバムで彼の音楽に出合いました。

 ダンスミュージックでありながら、うぇいうぇいパリピ系ではなくてひんやりした雰囲気。秋の夜にぴったりの冷たさがありつつも、刻まれるテクノのリズムと上手いボーカルの組み合わせは大好きです。アルバム"Fantast"は全体的にこの曲のような雰囲気が合って、リリース当時は(そして今も)かなりヘビロテで聴いていました。



「Moon」 CHON

 最後は、サンディエゴで結成されたスリーピースCHONによる、インストゥルメンタルの曲を。このバンドがとても変わっているなと思うのは、プログレと爽やかさ、メタルとノスタルジー……という相反する要素を自然に混ぜ合わせているところ。

 この曲は終始穏やかなのですが、アルバム全体では、美メロ/美音に油断していると突然現れる速弾き・ユニゾン・グルーヴに驚かされます。確かレーベルもメタル系だったような記憶が。それも納得の超絶技巧。

 余談ですが、彼らは日本のゲームが大好きで、フジロック参加時には任天堂のお店ではしゃいでいる様子も公開されていました。また来日して、思う存分遊んで欲しいものです。



 「月」と名のつく楽曲はどれも良いものが多くて、ここまで絞るのも大変でした。でも、どれもやはり好きです。それぞれのアーティストが、どうやって「月」を表現しているのか、聴き比べてみるのもまた一興。ご興味あればぜひ聴いてみてくださいね。

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