19. 秋に聴きたい音楽 ~アルバム3選

 秋、好きなんですよ……。テンションが上がりますね。紅葉は綺麗だし食べ物は美味しいし、秋が過ぎたらますます涼しくなるし。そんな大好きな季節が来たので、せっかくなので秋に聴きたいアルバムを選んでみることにしました。



● 1. Indigo Jam Unit / Re:common from indigo jam unit (2009)


 秋と言えばジャズかな……と思って、まずはこのアルバム。Indigo Jam Unitは日本のジャズバンドで、自分があまりジャズやインストを聴かない時期から聴いていた数少ないバンドの一つ。ビルボードライブ東京でのライブに行った時、ぼんやり席に座ってたら後ろにご本人たちが居てびっくりしたのを覚えています。(気さくにニコニコしてくれたのもいい思い出)


 このアルバムは、Indigo Jam Unitのアルバムの中では異色なものでしょう。なぜならこちら、ラッパー/俳優として有名なCommonの名曲をカバーしたもの且つ、Commonのラップを使用したアルバムだからです。まるで、Commonとセッションしているように自然な雰囲気で、Indigo Jam UnitとCommon双方の良さが交じり合っています。こういう企画は、どちらかがどちらかを食ってしまう……なんてことが起きやすいですが、このアルバムに限ってはそんなことありません。本当に、素晴らしいコラボです。普段ジャズを聴かない人、ラップを聴かない人でも、音楽好きならグッと来ること間違いなし。


 余談ですが、Commonのラップは汚い言葉が少ないという点でも有名です。ラップって、「お互いにdisり合う」「きつい言葉で罵り合う」といった印象が強く、確かにそうした側面・役割があるのは事実ですが、Commonのラップは少し違います。どちらかと言うとシュッとしていて、知的で、聴いていても耳に痛くない音が多い。(暴言の英語って、意味が解らなくてもなぜか音で暴言って気づくことが多いの不思議ですよね)そうした、耳に痛みを感じさせないラップだからこそ、Indigo Jam Unitの音と相性がいいのかもなと思いました。

 秋の紅葉散る散歩道のお供に、夜長のリラックスタイムに、おすすめの一枚です。



● 2. Alexander Search / Alexander Search (2017)


 日本ではほぼ知られていないアルバムだと思いますが、この機会に……。私がこのアルバムを知ったのは、ポルトガルに行った時立ち寄ったCD屋さんです。店員さんに「ポルトガルで人気のロックをください」と聞いた時、おすすめしてもらいました。

 Alexander Searchは、ポルトガル・リスボンで結成されたインディーロック・ポップバンド。ピアニストのJúlio ResendeとボーカルのSalvador Sobral(ユーロビジョン・ソング・コンテスト2017年のポルトガル代表、そしてポルトガルを優勝させた人)が結成しました。ちなみに、Alexander Searchという名のメンバーは居ません。20世紀のポルトガル人作家、Fernando Pessoaの筆名の一つだそうで、彼の詩を元に作った音楽でこのアルバムは構成されています。


 これが、ねえ……とにかく、とにかくいいんです。Salvador Sobralのシルキーなボーカル、優しいピアノを中心にした演奏陣の音色。優しい、あったかい……。そんな雰囲気が始終漂う、美しいアルバムなんです。全人類、これを聴いたら心が穏やかになるのでは……?そんなアルバム。ロックというより、アンビエントに近いです。

 特に、MVも作られている"A Day of Sun"は、題名の通りお日様の光を浴びながら秋の森を散歩するイメージにぴったりです。このアルバム全体を通して、とてもきらきらしているのにまぶしすぎない、木漏れ日のような波に揺れる日差しのような雰囲気が大好きです。心がぎゅっとなる音色とは、まさにこのこと。詩的な歌詞も相まって、自分なりに解釈してしみじみできるのも魅力。

 残念ながら、Alexander Search名義でのアルバムはこの一枚だけですが、メンバーは今も活動していて、Júlio ResendeとSalvador Sobralは一緒に動画をあげたりしています。日本で彼らの活動を知れる機会はあんまりないのですが、これからも遠い島国から、そっと彼らを応援し続けております。


 そう言えば、当時私はポルトガルで十枚くらいアルバムを買いました。人気のロックをおすすめしてもらいましたが、全体的に音が優しくてちょっぴり地味で、綺麗な音が多い音楽が多かったです。結構、店員さんが私の好みを気にしながら選んでくれたので、聴きやすいものを見繕ってくれたのかもしれませんが。それにしても随分と、優しい音のロックが多いなあと、お国柄の一端を感じた次第です。


※海外のCD屋さんでの思い出については、こちらのエッセイでご紹介しています。

「世界のどこかで音を買う 〜海外旅行CD屋さん巡りのススメ」

https://kakuyomu.jp/works/16816700429036035284/episodes/16816700429036070517



● 3. Why Bonnie / 90 In November (2022)


 Blair Howertonを中心とした、テキサス州出身の5人組ベッドルームポップバンド。Snail MailやBeach Fossilsの前座も務めた実力派で、本作がデビューアルバムだとか。(EP『Voice Box』をリリ ース済み)

 美しいメロディを歌い上げるボーカルは少し気だるく、遠く夕焼けの中で鳴るようなディストーションギターの音も合わせると、初期Snail MailやJay Somが好きな人には刺さること間違いなしです。私がまさにそうなので……!


 個人的には、夏から秋への移り変わりは心が躍るのですが、夏の終わりを切なく思う情緒も理解しています。そして、そういう季節にこのアルバムはぴったりなんですよね。

 というのも、Blair Howerton曰く本作のテーマは「自分の過去への思いを整理して、甘さも苦みもすべて受け入れること」だから。過去を懐かしく思いながら前を向くというのは、夏から秋への移り変わりはもちろん、秋から冬への移り変わりのタイミングの思いにも似たものがあります。だからこそ、季節が静かに寒さを帯びていく時期に寄り添ってくれる音楽だと思えるのです。


 秋の静かな休日に、リビングで触り心地のいいブランケットを膝にかけて、コーヒーでも飲みながら聴きたい一枚。想像するだけで体の力が抜けてリラックスした気持ちになります。



 今回は秋らしい、ゆったりリラックスして聴けるアルバムをご紹介しました。ご興味あればぜひどうぞ。

 ではでは。

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