13.音楽、どこで聴く? 〜拙作に出てくる会場色々
音楽を扱う作品には、当然、音楽を聴く場面が出てきます。自室や歩きながら……というシチュエーションもありますが、私が読み書きしていて特に楽しいのは(そして書くのが大変なのは)、どこかの会場で音楽を聴く場面。
そこで今回は、拙作内に出てきた会場について振り返り、現実世界にもある会場へ想いを馳せたいと思います。
以下、拙作のリンクは貼りますが、未読でもわかるよう&確信に迫るネタバレのないように書いてあるので、その点はご安心下さい。
さて。次の中で、あなたが一番行ってみたい/演奏してみたい会場はどこですか?
◯ 会場1. 礼拝堂
【作品】アオイのすべて 〜第四十一代司教に係る司教記録本
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888774935
【作品ジャンル】異世界ファンタジー、ヒューマンドラマ、ドキュメンタリー
【音楽ジャンル】讃美歌
物語の舞台・クアドラートの街は五つの地区に分かれていて、その真ん中に位置する零地区は、クアドラートの住民にとって精神的・政治的……様々な面で支柱となる地区です。そんな場所にある教会の礼拝堂で聴く讃美歌。さぞや美しい音色でしょう。
ここにあるのは、街で一番いい音が鳴るパイプオルガン。司教の説法がある日は、説法とパイプオルガンの音色や讃美歌を求め、どの地区からも住民がやってきます。
余談ですが、私は観光客として海外の教会に行くのが好きです。個人的には神様は居ても居なくてもいい派ですが、教会の中でパイプオルガンが演奏されていたり、誰かが歌っていたりするのを聴く時だけは、「こりゃあ音楽の神様、居てもおかしくないな!」って気持ちになるんですよね。不思議。
◯ 会場2. お城のダンスホール
【作品】シンデレラなんかやっていられるか! ※現在非公開
【作品ジャンル】異世界ファンタジー、異世界転移、青春
【音楽ジャンル】舞踏会の音楽
タイトルからお察し頂ける通り、高校生の主人公がシンデレラの立ち位置で異世界に巻き込まれるお話です。そのため、王子様の結婚相手を決める“お城での舞踏会”も当たり前のようにやってきます。(道中や会場で何が起きるのかは作中にて。)
絢爛豪華なお城、シャンデリアの輝き、参加者の華やかなドレス、管弦楽の生演奏! しかし残念なことに主人公は、音楽に浸ったり華やかさにうっとりしている場合ではありません。せっかくなら、もっと優雅に楽しめたらよかったのにな、なんて思います。
◯ 会場3. 体育館
【作品】「ティーンズ・イン・ザ・ボックス」※現在非公開
【作品ジャンル】恋愛、SF、学園
【音楽ジャンル】エレクトロニカ、ダンス、テクノ
ホログラムやミラーボールで見た目は装飾されていますが、結局は体育館。音は良くないでしょうね……。低音を強くしすぎると窓がビリビリ言いそうです。
◯ 会場4. 街のクラブ “クラブ・ジャック”
【作品】「ティーンズ・イン・ザ・ボックス」
【作品/音楽ジャンル】同上
正式名称は“クラブ ジャック・イン・ザ・ボックス”。街中にあって、若手DJたちが出演しています。
出演者・客層が若者のため、悪童たちの遊び場といった雰囲気。学園祭とは違い、DJたちはオリジナル曲を演奏したり、仲間の曲を流して
ステージ裏には、こっそりステージやフロアを眺められる関係者席がありますが、スピーカーと同じ方向を向いているので、フロアで聴くよりやや音質は下がります。高級なVIP席と言うより、友達を呼んで盛り上がる場所に近いです。
◯ 会場5. 高級ダンスクラブ
【作品】「やがて旋律はひとつの街で踊る」※現在非公開
【作品ジャンル】SF、ヒューマンドラマ
【音楽ジャンル】ダンス、エレクトロニカ、テクノ
作中に出てくる三つの街の中で、一番の富裕層が暮らす街・ソアにあるダンスクラブ。大企業の幹部かつヒットメーカーが出演・経営しているからか、街で一番繁盛しています。
音楽の系統は先述の“クラブ・ジャック”と似ていますが、立ち位置は真逆で、ここは金持ちが集う高級な遊び場。本作の世界では、デジタル機器を使った音楽自体が、金持ちの道楽なんです。この店へ通うことや、貴重な(この意味は作中にて)音楽を聴くことが、ステータスとして持て囃されています。
“クラブ・ジャック”がインディーズの中心地なら、こちらは流行や時代の最先端。洗練されていて、人によっては「いけすかない」と思うかもしれません。
◯ 会場6. エレベーター内
【作品】「やがて旋律はひとつの街で踊る」
【作品ジャンル】同上
【音楽ジャンル】ポップス
作中に出てくる三つの街を繋ぐのが、巨大なエレベーター。エレベーターがある柱の中に、二つ目の街・ミドルがあります。ミドルは、金持ちと貧乏の真ん中に位置するごく普通で平和な街。そのため、発展した音楽は呑気なポップスです。無限ショッピングモールのような街中で聞こえるのは、愛だ恋だと歌う音楽ばかり。ソアの音楽がこの街で売れるのは、そういう曲調に飽きている人が多いからかもしれません。
三つの街を行き来するエレベーターの中は公園や広場に近い景色で、乗客はお喋りしたり外を眺めたり自由に過ごしています。作中では、ミドルらしいポップスをエレベーター内で演奏して、チップを稼ぐ描写があります。
(余談ですが、このエッセイを公開した2021/7/6/に、パリでは、コロナの影響により2020年3月から禁止されていた地下鉄でのストリートミュージシャンの演奏が、再開されたという記事を見ました。日常が戻ってくる兆しというのは、どこの国の話題でも嬉しいものです。)
◯ 会場7. 下町のミュージッククラブ “エンダーズ・ホール”
【作品】「やがて旋律はひとつの街で踊る」
【作品ジャンル】同上
【音楽ジャンル】ジャズ等アコースティックな音楽
作中に出てくる三つの街で一番の貧困層が暮らす、地べたにある街・フォールのミュージッククラブ。主人公はここの屋根裏部屋に居候していて、ステージ上の演奏や照明の明かりを足元で感じながら暮らしています。ちょっぴり羨ましい……!
本作の世界では、貧乏人にはデジタルな音楽なんて夢のまた夢。聞こえてくるのは、金持ちへの恨み節や人生への皮肉を込めた音楽ばかり。だけど、腐りかけた気持ちを音にして、踊り笑い合うのがフォールの住民の生き方です。
使われる楽器はすべてアコースティック。ですから、演者の熱量がそのまま客にも伝わります。この一体感こそ、フォールのアナログな音楽の一番の魅力だと言えるでしょう。
イメージしたのは、ニューヨークにあるアポロシアターや日本にもあるブルーノートのような場所。だけど、お行儀良く座って聴くというより、踊りながら良質な音楽を楽しめる場所として街の人々に愛されています。
一方、ボックス席はオペラ座にあるような個室を想定しました。入り口から一般客とは別で、廊下を抜けドアを開けて入る意味深か空間。猥雑さに溢れる街であればあるほど、こうした秘密の場所は求められるのです。
結構色んな種類の会場が拙作に登場しているんだなぁと思うと同時に、「早く色んな会場に行きたいな」なんてしみじみ思いました。あなたにとって、どの会場が一番行ってみたい/演奏してみたい場所に近かったでしょうか?
コロナだなんだと言って、なかなか以前のように気軽に会場へ足を運べない状況は続きますが、物語の世界くらいは、好きな場所で好きな音楽を楽しみたいものですね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。