冬斗
急いで戻っていく春斗を見て俺は小さい頃の事を思い出していた。
二人共言うことなんて全然聞かないくせに何かあると子犬のような目ですがりつき俺に頼ってきた。そしてそんな二人が本当の兄弟みたいでとてつもなく愛おしかった。
あれから時が経ち、春斗は持ち前のコミュニケーション能力を生かし学校の人気者となっていた。
俺だって妹のような存在だと、思っていたのに・・・。
◇ ◇ ◇
一年前の冬、受験勉強を見てやることになった。俺が高校に入ってからは学校が違くなり二人と会う頻度は少なくなっていた。しばらくぶりに会い黙々と机で勉強に勤しむ彼女の姿を見た時、ふと、綺麗だなと思った。今まで感じなかった思いが急に駆け巡った。
俺は動揺を必死に隠しながら勉強をなんとか教え続けたし、誰よりも合格を願っていた。だから合格の報告を受けて笑顔の姿を見れたときはとても嬉しかった。
それから告白しようか迷った時もあったけど学校で会った時は声を掛けてくれたり、何より今まで積み上げてきた関係が壊れるのが怖かった。
なのに・・・なんなんだ、どういうつもりなんだ、春斗は!
昔からひっつき虫で好きなのがバレバレだったのに、鈍感なのか想いに気付いてもらえていないようだった。
そんな春斗も中学で彼女が出来たとかで諦めたのかと思っていた。しかも、さっきの言いぶりだと俺の想いに気付いていたのか・・・。
怒りとショックが同時に来たあとしばらくボーッとしていたが、急にある考えがよぎった。
・・・いいのか、これで?
春斗に惹かれている様子は一度も感じた事は無い。でも、世間一般では春斗は格好よく、もてはやされているのは事実だ。もしかしたら万が一、二人が付き合ってしまう事もあるかもしれない。
そう思った時全身に悪寒が走った。
ダメだ、そんな事、あってはならない。
何よりもしそうだとしても今、想いを伝えなかったら俺は一生後悔する!封じ込めていた想いを伝える為、俺は階段を登り始めた。
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