9月27日(3)

「アサギリ、寝てなくていいのかい?」

「あぁ、今日は調子がいいんだ」

 母さんからの声掛けに答え、俺は家の玄関を出る。

 三日ぶりの外とあって日光がひどくまぶしく思える。

 母さんに答えたように、今日は調子がいい。

 俺は自転車を走らせ、近所の花屋さんに向かう。

 そしてお目当ての物を買い、次の目的地へ。

 自転車を走らせること二十分余り。

 息をひどく切らせながら、向かったのはシオンが眠る場所。

 流石に裏山のあの場所ではないが、裏山から相当近い場所。

 花と水を持ち、その場所に到達する。

「シオン、久しぶりだな」

 家から持ってきた線香を立て。

「あれから一年。そんなに経っちまった」

 手を合わせて、ゆっくりと目を閉じる。

 シオンとの思い出を頭の中で考えながら、あれからのことを報告する。

 買ってきた紫苑の花がほのかに香った。

「また会えるかな」

 その問いに答えるように風が吹いた。

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この花のことを忘れないように何度でも とぉ @ayameken

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