第4話 髪飾り
「少女のその髪飾りってさ」
ある日の昼下がり、
ふと気になったことを少女に聞いてみた。
「ふぇ?この歯車のやつ?」
「そうそれ、それって何?」
「なにって髪飾りだよ?」
「髪飾りというか、歯車じゃ?」
「そだね。」
「3つくらいの歯車が組み合わさってるみたいだけど?」
「そうだと思う」
「たまにカタカタ動いたりするし」
「歯車だからね」
「なんで頭にそんなものつけてるんだ?」
「アンドロイドだからかな。そういうものなんだよ」
そういうものらしい。
「可愛い女の子と無機質な歯車のミスマッチが最高にクールだよね」
ドヤ顔で言われた。クールなのか?
あと可愛いって……可愛いけども。
「あとアンドロイド的にはこういう一見無駄に見えるようなものこそが大事なんだよ。遊び心だね。」
遊び心か、なるほど……わからん。
「それに、この髪飾りはわたしの感情インターフェイスでもあるんだよ。」
歯車に触れながら少女は続ける。
「わたしの今の気分とか感情の動きを受けて動いたりするようになってるの。」
「ふーん……、たまに違うものと取り替えていたりするよね。あれは?」
「あれはソーラーパネル。太陽光のエネルギーを取り入れやすくするためかな」
そうなのか。
「まあ、ぶっちゃけるとパネルが無くても光合成できるんだけどね。気持ちというか、雰囲気的なやつだよ」
そういうものなのか。
「あ、それにね。わたしの髪飾り、ソーラーパネルとか歯車以外にもあるんだよ。」
ふふーん、と得意そうな少女。
「まあ、そのうち少年にもみせてあげるよ。いまは乙女の秘密ね」
乙女の秘密らしい。
さておき、わざわざ歯車を
頭につけておく必要ないんじゃないだろうか。
そんなことを伝えると、少女はうーんと思案することしばらく。
「たとえばさ、少年の頭に猫耳がついてるとするじゃん?」
「お、おう」
いきなりだな。
「じゃー、想像してみてよ、すべての人に猫耳がついている世界を……」
「世界の終わりだな……」
「そーじゃなくてー、ぴこぴこ動いてるところを想像してみてほしい」
「うんうん」
「なんとなく気持ちとか気分とか現れている気がしない?」
あと可愛いし、と少女。
うーん……、そうなのか?
「そういえば大昔に人間の脳波を受けてぴこぴこ動く猫耳があったらしいよ?」
「マジか」
「マジマジ、さすがにこのシェルターには残ってないと思うけど……いまわたしがいったような世界を実現しようとした人がいたのかもね」
そうなのか……、奇特な人もいたもんだな。
「なんとなく、わかってもらえた?わたしがこの髪飾りをつけてる理由。」
歯車がぐるぐる回っている。なんだかご機嫌らしい。
もっと少女に似合いそうなものもありそうだけど……彼女が良いならそういうことにしておこう。
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