あったか〜い
コンポタ、おしるこ、ココア。
冬の自販機王道三種。屋外の冷たいベンチで蓮、優、ハルと並んで座る。
温かな缶でかじかんだ手を温めつつ一息ついた。
「おしるこって言うけどさーお餅入れなかったらただのあんこ汁だよね」
「身も蓋もねェこと言うなよ。缶に餅入んねーだろフツー」
「……そう言う割に毎年冬に一度は必ずそれ買ってるな」
「私はおしるこという概念を飲んで冬を実感してる」
甘いのが沁みる、と幸せそうに灰田は二人に挟まれて温もりを享受する。
時々吹く風に肩を上げて、寒さに耐えながらココア缶に口をつけるハル。
しれっと二人に風上に配置され風よけにされている蓮もコンポタの缶を手に、もう片手はポケットに入れて寒さを凌ぐ。
「早くどっか店決めて入ろうぜ、今日寒すぎ」
「ハルさんマフラーどうしたの?去年してたよね」
「こないだ、あー……伸びたから捨てた」
「都合の悪い部分を端折るな」
「喧嘩吹っ掛けられてやり合った時に使って伸びたから捨てた。つか、あれ蓮も手ェ出しただろ」
首が寒そうなハルに灰田はあるべき防寒具がない事に気づく。
缶のフチを齧っていたハルは缶を口から離す。
蓮の言及に、見知った間柄だからとハルは白状して会話のバトンを返した。
それは珍しい、と灰田は蓮を見上げる。
「……自己防衛。進んで加担はしてない」
「お前相手したヤツ超泣きべそかいてたじゃん。片腕、指先まで形変わってたし」
「うひゃー痛そう。蓮さんの顔怖かったのかなぁ」
「ハルより凶悪な顔は知らないぞ俺は。あと、脱臼させただけで折ってはない」
あの脱臼は骨折より絶対に痛いとハルが呆れる。
骨折も脱臼も経験した事のない灰田は想像上の痛みに顔を顰めていた。
蓮がわざとらしく目を反らしてコンポタを飲み干す。
「……そういえばこの前、チョコを貰った。食べきれないから帰ったら分ける」
「話題の変え方ヘタクソかオメェ」
「え、ありがとう嬉しい」
「秒で釣られんなや」
パッと気分を変えた灰田に真顔で突っ込んだハル。
ジッと飲みきったコンポタ缶を蓮が見つめている。
当たりでもついてたのかと灰田が手元を覗くが何もない。ハルと顔を見合わせた。
「どうしたの?」
「…………粒が残った」
「「あー」」
地味に悔しいやつね、と二人が共感する。
三人は缶を捨てて暖かい場所を目指した。
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