友情に乾杯
一時的にジャックした監視カメラから送っている映像が仕事中の二人を映す。
灰田は映像を見ながらデスクに腕を置き、その上に顎を乗せた。
15年を超える付き合いの蓮とハルカは親友と言っても過言ではない。
仕事は勿論、プライベートでも用事があればつるんでいたりするのを見かける。
あの人付き合いベタで無愛想、人見知りタイプの蓮の数少ない心許せる友人。
基本的に社交的で満遍なく他人と付き合えるハルだが、彼にとっても蓮は特に気の置けない間柄として大事にしているのが伝わる。
とある場所に潜入してオフラインのデータを持ち帰ってくる仕事。
難しいものではないが、見つからないことが大前提。
灰田はタイミングよく二人が通る扉のロックを解除するだけ。あとは二人の行動をカメラ越しに見守っている。
こういう仕事は勿論余計な音は出せない。だから画面の向こうの二人の間に言葉はない。
ただ目を合わせて適当なハンドサインで意思疎通をはかっている。
あのハンドサインの意味を分析した事がある。簡単なものは何となく分かる気がするものの、複雑なサインの法則性は見られなかった。
前に本人らに意味を聞いたのだが、あれはその時の雰囲気で会話しているらしい。
普通、仕事中に使う暗号やサインは前もって決めておくのがセオリーだ。
二人はその場で済ませてしまう。
互いが考えている事を言葉にせずともおおよそ理解しているからこその行動。
それは付き合いの長さだけが成し得る結果。
蓮がコンピューターにアクセスしてデータを探している間、ハルが部屋の入口を見張る。
この役割分担もつい先ほど決まったこと。
「男同士の友情、ってヤツ?ちょっと嫉妬しちゃうなぁ」
彼が手持ちのタブレットにコピーした圧縮データを送る。
問題なく灰田の元に届き、伏していた姿勢から背筋を伸ばした。
二人の仲の良さを見ているとほんの少し羨ましいな、なんて思ってしまう。
灰田はカフェオレの入ったマグカップを顔の高さまで上げて、二人に賞賛を送った。
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