設備紹介

自己紹介を終えたミシアは、次に甘いはちみつ亭の設備を紹介すると言い出した。

ミシア「店の設備を紹介するね!店長の、ボクが!」


ミシア「甘いはちみつ亭は典型的な宿酒場だから、1階が酒場、2階に宿泊用の部屋があるよ。ちなみに典型的って言うのは、そう聞いただけで、ボクはあまり他の宿酒場に行ったことが無いからよく知らないんだけどね!」

アーキル「いや、確かに典型的な作りをしていると思うぜ。しかも、色々配慮されていて、良い方の部類に入る」

ミシア「そうなの?ありがとう!」


●宿泊設備

ミシア「2階に泊まれる部屋があるよ。奥の2部屋はボクたち従業員の部屋だけど、それ以外は誰も泊まってないから――言ってて悲しくなるけど――、好きな部屋を選んでね」

タニア「誰も泊まっていませんが、いつでも使えるよう、毎日お掃除していますから、安心してお泊まりください」

ミシア「さすがタニアだね!えらいえらい」

褒められつつ頭を撫でられて、タニアは嬉しそうだ。

部屋を見たアーキルが訊ねる。

アーキル「ベッドも大きくて、オレでもちゃんと寝られる。大したもんだ」

タニア「ありがとうございます。ベッドを2つ繋げてみたんですが、問題なかったようで良かったです」

アーキル「しかし、窓に鉄格子がはまってるのはなんでだ?」

ミシア「さあ?ライラさんが付けたから、理由は知らないんだよね」

ケニー「そういう宿屋の話は聞いたことがありますよ。宿代を踏み倒して逃げないように、窓に鉄格子を付けるんだとか」

ミシア「でも、宿代は前払いで頂いてるからねぇ。そんな必要ないんだけど」

ケニー「そうですよねぇ。どうしてでしょうね」


●酒場

ミシア「酒場では空いている所に座ってくれていいけど、カウンター席の一番奥は大事な常連さんの指定席だから、そこだけは座らないでね」

ライラ「まあ~、ミシアちゃんたら~。うふふ」

アーキル「どういうことだ?」

ミシア「いずれ紹介するね!」


●村への入出登録

ミシア「入村登録もここで出来るよ」

と、L形のカウンターの角にある、2台の『ハップ』を腕で指し示す。

ハップというのは、記録やお金を保存する為の魔法具だ。

外見はゾウという鼻の長い動物がモチーフにされているが、色は黄色。半開きの目と微笑む口が神秘的で可愛いと言う人がいる一方で、ヤバいクスリをキメてイっちゃってる感じがしてヤバいと評する人もいる。名前の由来は、動作するときに「はぷはぷ」という音(鳴き声?)を出すから。

記録を録ったりお金を保存する金庫として使えたりするので、ある程度の規模の店なら1台は置いてある。国に納める税金もここから計算されるので、ハップがある店というのは、信用がある証でもある。


2台目のハップは、旅人の村への出入り記録をつける為のものだ。普通は村長の家に置いてあるものだが、ハルワルド村に来る旅人なら必ず甘いはちみつ亭に泊まるので、ここに置いてあるのだ。

名前を書いてハップに見せると、「はぷはぷ、ふすふす」と言いながらそれを読み取り、記憶する。もちろん偽名など使いたい放題だが、犯罪者ならハップに偽名すら残したくないものなので、ハップに登録するというのはある程度の信用の証になる。

慣れた旅人なら、ハップの登録に使用するパスポートを持ち歩いているものだ。


●テレバン

ミシア「テレバンを点けるのは、ボクの仕事なんだー」

テレバンとは、『遠見の水晶板』の通称で、放送局から放送している映像や音声を受信し、映し出す魔法具だ。

基本的に毎日放送されているが、時間帯は夜のみ。たいていはニュースを1時間ほど放送するだけだが、たまに地方の動植物を紹介したり演劇を流したりすることもある。

国の重要な事項を伝達する為に使われることもあるので、普通の村や町でも必ず1つは設置されている。基本的に集会所に置かれるのだが、ハルワルド村では甘いはちみつ亭に置かれている。その理由は、魔力だ。


魔法具を動かすには魔力が必要だ。それには2つの方法があり、ひとつは人間が魔力を直接送ること。もうひとつは魔畜瓶から供給すること。

人間が魔力を使えば無料だが、テレバンを1時間稼動させるほどの魔力量を持っている人間はまずいない。普通は何人かで交代して魔力を流す。

しかしミシアは1人でそれが出来る。だから、ハルワルド村では甘いはちみつ亭にテレバンが置かれているのだ。酒場の方が人も集まるし。

これはケニーやコノハたちにとって驚きの話だった。魔法学院でも、それほどの魔力量を持っている人間はほとんどいないから。


●露天風呂

ミシア「それから、建物の裏手に、大きな露天風呂があるよ!川から引いた水を魔法具で温めてお湯にしてるんだけどね。村の人からは、酒場と露天風呂は大人気なんだ!」

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