序(2)(語り:ルディア)

リザードマン――二足歩行のトカゲのような姿をした、人間並みの大きさの魔物――が振るった鉤爪を、左手で持った盾で受け止める。

そして、鉤爪を止められたことでバランスを崩したリザードマンの胸を、右手に持った刺突剣レイピアで貫く。

「やりました!私にも出来ました!」

先輩冒険者がよく語る「隙」というものが、初めて見えた気がした。


しかし喜べたのも束の間、その隙を突いて別のリザードマンが襲い掛かってくる。

「しまった…!」

盾は使ったばかりで間に合わない、剣も最初のリザードマンの胸に刺さったまま。

手を離して避けるべきか、それとも鎧で受けても大丈夫…?と悩む一瞬の間に、襲い掛かってきたリザードマンが吹っ飛ぶ。

隣に居たミシアが殴り飛ばしたのだ。

「ありがとう、ミシアちゃん」

お礼を言いながら、吹っ飛んだリザードマンが起き上がらない内に止めを刺す。


ミシア「にししっ、いちいちお礼なんか要らないよ、ルディアさん」

そう笑ったミシアは、あっという間に前方のアーキルの横に走りこみ、またリザードマンを殴りつける。

アーキル「オレの援護は要らん、後衛を守ってろ!」

ミシア「大丈夫、もう後ろには残ってないよ」

アーキルは一人で5匹のリザードマンを相手にしていたはずですが、一応援護に行くべきでしょうか――と考える私が見たのは、彼が最後の1匹を倒すところだった。


倒れている内の1匹には、矢が刺さっている。これはコノハが倒したのだろう。

コノハ「お疲れ様、みんな」

弓を持ったコノハが声をかけてくる。


ケニー「皆さん、お疲れ様です。僕の出番は無かったですね」

ケニーも笑顔で声をかけてくる。

ケニーの防壁魔法には今まで何度も助けられているが、ミシアが冒険隊パーティーに加わってからは彼女が壁役を担っており、ケニーが防壁魔法を使うことは少なくなった。もしミシアが居なかったら、さっきの2匹目のリザードマンでもケニーが魔法を使って助けてくれただろう。

アーキル「何言ってんだ、お前には治癒魔法もあるだろう。怪我を治してもらわにゃ困る」

ケニー「どこか怪我をしたんですか?」

アーキル「いや全然」

ケニー「ほらやっぱり出番が無い!」

みんな吹き出した。

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