本音

 後悔して欲しくない。

それは一体どういうことなのだろうか。私は、妖精さんの言葉の意味が全く分からなかった。


『ボク元は人間だったんだ。君と同じでボクは、大人になりたくないって思ってた。そんな時に妖精が現れて、ネバーランドの話をしてくれたんだ。』

 驚いた。妖精が昔、私と同じ様に妖精さんに出会ってその話を聞いていたことに。


『ボクは妖精に言われるがままにその国について行った。そこはとても楽しいところだった。でも...っ』

 そこまで言うと、妖精さんは言葉を詰まらせた。


『でも、そこは子どもだけの国なんだ。大人になってしまえば、その国での自分の居場所はなくなってしまうんだよ。』


「居場所か無くなるってどういうこと?ピーターパンに殺されてしまうから?」


 私は自分の知っていることが確かな事かどうかを確かめるように妖精さんに質問する。すると妖精さんは今までで一番苦しそうな顔をして、こう答えた。


『そうだよ。よく知ってるね........そう、君を殺すのは....ボクなんだ。』


「そうなんだ。でもいいよ。そうしたらもう苦しまなくて済むんだもん。」

 そう、私が今が一番苦しいのは『今』なのだから、その『今』から逃げる方法がネバーランドに行くことなんだと思う。


『それでも本当にいいんだね?』

 妖精さんは自分の話を終えた後私にこう聞いてくる。妖精さんの話を聞いても気持ちは変わらない。

「いいよ。大人になりたくないし。」

 私が答えると妖精さんは少し、悲しげな顔をしたように見えたのはきっと気のせい。


『ボクはそんなことして欲しくないけど..』

 まただ、さっきからそればっかり。私の事なんてなんにも知らないのに.....。

 妖精さんは、ネバーランドに行く準備を始めている。


「何も知らないくせに、そんな簡単に優しいこといわないで...」

 やってしまった.....最後まで、口に出さないつもりでいたのに。

 だけど、一度おもりが外れてしまったら、もうとまらなくて。


「私だって...本当はもっと楽しいこといっぱいやりたいし、他のみんなと同じように恋だってしたい.....」

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