黒い噂と選択肢
「行くって何処へ?」と聞いてはみたものの、妖精さんのこの言葉で大体の見当はついてしまっていた。ネバーランド、もしそんな場所があるのならまだ子どものうちにネバーランドに行ってしまって、子ども時間を楽しめた方が楽なのかもしれない。
『ネバーランド。』
そうか、やっぱりこの子はピーターパンだったのか。
大人のいない、そんな国だと小さい頃読んだ絵本で知った。ピーターパンに連れられて行った三姉弟も、大冒険の果てに家に帰る。そんな話。
ハッピーエンドが大好きだった私も歳を重ね、必ずしも現実が絵本と同じようにならない事を知った。
ネバーランドもまた、現実と同じように悪い噂があるらしい。
『どうする?行く?』
今私は、十九歳。ということはあと一年で大人になってしまう。もし噂が本当なら、私はあと一年で死ぬ。
これは友人に聞いた話だ。
『ねぇ、ピーターパンって本当は物凄く怖いお話なんだよ?』
私と同じで読書好きな友人だった。それと同じくらい噂好きでもあった。
『へぇ.....それどんな噂?』
一度だけその噂について友人と話したことがあった。
『じゃあ質問。なんでネバーランドには子どもしか居ないと思う?』
私は、ずっとその子ども達のことを心優しいピーターパンが現実世界へ送り届けてくれるからだと思っていたけれど、どうやら違うらしい。
彼女が言うには、ピーターパンが大人になる前にその子ども達を全員殺してしまっているかららしい
でも、もうそれでもいいと思う。毎日毎日酷い顔をして過ごすよりは【最後の一年】と思って楽しく過ごす方が、ずっとましなように思う。
「行くよ、ネバーランド。」
私の言葉に、妖精さんが表情を歪める。
これでいいんだ、きっとこれが今私にできる最良の選択なんだ。自信なんて全くないけれど、そう思わないと.....今度こそ本当に自分が壊れるきがする。
『本当に.....それでいいの?まだまだ、やりたいことたくさんあるんじゃないの?』
何も知らないくせに、妖精さんは全部分かっているみたいに話す。
今にも消え入りそうな声で妖精さんはこう言った。
『ボクはそんな後悔して欲しくないな.....。』
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