いちにのさんで

『おっけー、じゃあそこの窓開けてくれる。』

妖精さんに言われた通り、部屋の窓を開ける。窓の外はまだ少し風が吹いていた。この子は今から一体何を始めようとしているのか、私には全くわからなかった。


『うん。これくらい風があれば大丈夫だね。さっ、行くよ!』

やっぱりいくら考えても、この子が何を考えているのか全然分からない。だから私はまた妖精さんに向かって質問する。


「行くって何処へ?」

私の質問に妖精さんは笑顔で答える。『どこって?外に行くんだよ』って。

風がまた少し強くなって来た気がする。


『今なら行けるね、いちにのさんでジャンプしてね?』


「はぁ?」

私の頭の中はまだハテナでいっぱい。それでもそんなこと知らないって言うみたいに妖精さんはどんどん話を進めていく。


『いい?いちにのさんだよ?行くよ?』

あぁ、ここまで来たらもう戻れない......どんなことが起こってももうどうでもいいと思った。


『いち、にの......さんっっ!』

ぶわっ!っとその日一番強く風が吹いて、カーテンも大きく浮き上がった。私は、妖精さんに言われた通りに飛んだ.....と思う。


『あははっ!大丈夫〜??成功したよ。もう、大成功!』

妖精さんの声がして、ゆっくり目を開けると.....体が宙に浮いていた。

自分でも信じられないけれど、私は今......空を飛んでいるんだ。


『どう?凄いでしょ。』

辺りには、たくさんの星が輝いていた。いつも見上げている景色より何倍も綺麗に見える。こんな魔法みたいなことが、本当に起きるのかと思った。


「あーあ、スケッチブック持ってくればよかったなぁ.......」

普段、見上げている星をこんなに近くから見ることなんて滅多に無いだろうからスケッチブックを持ってこなかったことを後悔する。


『気分、晴れた?』

突然、妖精さんがこんなことを聞いてきた。私は一度も妖精さんに気分がなかなか晴れないことを話したことはないはずだった。


「どうして知ってるの.....?」

私はまた、妖精さんに質問する。すると妖精さんは、こんな風に答えた。

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