第22話
そこには、懐かしい顔があった。
歳を重ねった僕と同い年の、女性。
「久しぶりだね。村上くん。約束守ってくれてありがとう」
女性は、そう話す。
「河原さん?」
女性は頷く。
「声が違って聞えるのは、お互い様。この歳になると老化するよ」
確かにそうだ。
50年も経つと、声なんて変わってしまう。
いや。声だけでなく、いろいろと変わる。
変わっていくのは、若いうちだけではないのだ。
しかし、だんだんと懐かしい記憶が、蘇ってくる。
「あなたが名付けてくれた、功暁と瀬梨は、もう独立して孫も出来たよ」
「ということは?」
「双子だったんだ。ふたりとも一般市民だけどね」
今の世の中、普通でいることが幸せなのかもしれない。
「あなたの、あの本はあの後に何冊か買って、子供たちに与えたよ。」
「そう・・・」
「それと、これ」
河原さんは、ぬいぐるみをいくつか取り出す。
僕が作った、というか、デザインしたぬいぐるみだ。
「村上くんが、デザインしたこの子たち、今でも大事にしているよ」
わずかの間ではあったが世に出た、子供たち。
今でも、覚えてくれている人がいたことを、嬉しく思う。
「村上くんは、独身だよね?」
「ああ。もちろん」
「うん。あなたは結婚には向いていない」
「悪かったな」
「悪口じゃないよ。あなたは、優しすぎる」
河原さんの眼は、どこか寂しそうだ。
「旦那さんは元気?」
本原さんは、首を横に振る。
意味はわかった・・・
「じゃあ、この小説の続きといきますか、村上くん」
「続き?」
「再会した後の、告白でしょ?」
河原さんは、少しいたずらっぽい眼で、僕を見る。
僕は、その想いを告げた。
河原さんは、その告白を聞き、こう答えた。
あの、僕の小説の【初恋】と同じ答えを・・・
「待ちくたびれたよ。遅すぎるよ」
淡い想い出 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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