第21話
久しぶり・・・というには、時が絶ち過ぎた。
僕は世間のしがらみから逃げたのだ。
でも、後悔はない。
あの時の自分にベストの選択をしたのだ。
なので、戻りたいとは思わない。
久しぶりのこの町は、基本は変わっていない。
憎たらしいくらいに変わってない。
ただ、あのトンカツ屋が移転したのは、知っている。
かなり、話題になったので、それだけは、覚えている。
移転先のちらしもあったが、行く事はなかった。
あの桜の木は、優しくかはわからないが、僕を見降ろしている。
僕は、あの桜の木が生えている高台へと向かった。
僕の書いた小説では、彼女のほうから声をかけてきた。
現実はどうだろう?
やはり、甘くないか・・・
そもそも、、いるかどうかわからない。
でも、足を向けずにはいられなかった。
僕ももう、70歳を過ぎた。
でも、隠遁生活のおかげた、体力だけは衰えていない。
もともと、あるほうではなかったが・・・
彼女には、彼女の人生がある。
なので、それに首をつっこむつもりはない。
ただ、僕が命名した功暁と、瀬梨・・・
どっちになっているかわからないが、その子ももう50歳くらいか・・・
孫がいても、おかしくないな。
70歳を過ぎた、河原真美。
今の君に会うのが楽しみだ。
そうこうしているうちに、高台につく。
そして、桜の木に手をやる。
(お前は、ずっと見てきたんだな)
桜に語りかける。
周囲には、誰もいなかった。
子供はもちろん、お年寄りさえも・・・
そうしていると、後ろから、声をかけられた。
懐かしい声ではない。
初めて聞く声だ。
しかし、その声は正確に僕の名を呼んだ。
「村上秋夫さん」と・・・
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