第20話

人間、歳を重ねる事に1年が短くなっていく。

それは、それまでの自分の人生と比較して考えるからためらしいが、

こういうのも、一種の相対性理論だろうか?


僕も、歳を取った。


彼女と交わしたあの約束は、忘れていない。

というか、忘れる事が出来なかった。

得てしてそういものかもしれない。


世の中は、そんなに甘くない。

少しは評価されると、どこかで期待をしていたが、やはり厳しい。


それでも、自分のキャラクターが世に出た事は、嬉しい。

国民的キャラではないが、説明すれば「あっ、あれか」程度の認知は得た。


でも、これが限界。


その後は、細々と生きている。

結婚はしていない。

僕は、結婚には向いていない。

自分でわかっている。


おせっかいな周囲はお見合いを勧めるが、全部断った。

その結果、会社を首になった事もある。


理不尽だ。


人間、根本的には変わらないものかもしれない。


僕は、仕事を早々に引退をして、隠遁生活をしている。

余生は、自然に囲まれて生活するのが、幼いころからの夢だった。


で、50年が経とうとしている。

正直、生きられるとは思っていなかった。


ある意味で、意外。


そして、一応約束なので、あの桜の木の下へ行くことにした。

残っていればの話だが・・・


こうして、久しぶりに町へ出る事となる。

懐かしの、あの街へ・・・




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