第19話

数日後、私の店のトンカツ屋は、移転する事になり、

それに伴い、私も引っ越す事になった。


お客さんが、多くなってきたので、もう少し広い所に移転することになったのだ。

といっても、僅か数駅先なのだが・・・


でも、村上くんの性格からして、探してくれるということは、ほぼない。


村上くんの通っている学校は、彼の家から歩いて行ける距離。

電車に乗る必要は、ない。


なので、気まぐれでも起こさない限り、私の事は想い出として残すに過ぎない。

旦那も、職場を変える事となる。

理髪店店主として、独立するのだ。


でも、私は美容師とよんでいる。

せめてもの、かっこつけ。


村上くんとは、おそらくはもう、会う事はない。

願わくば、村上くんの夢が成就するように、祈願しよう。

彼の努力次第だが、せめて陰ながら応援したい。


それが、せめてもの罪滅ぼし・・・

そして、生まれてくる2人の子の名付け親となってくれた彼への、せめてもの気持ち。


50年後、生きていれば、彼は約束は守ってくれる。

それだけは、断言できる。


ただ、会ってもすぐには、私とはわからないかもしれない・・・


「合言葉でも、決めておけばよかったかな」

少し後悔する。


それから、3か月後、私は男女の双子を生んだ。

村上くんの名付けてくれた、功暁と瀬梨を命名した。


村上くんの望んだとおりに、自分の描いた未来で成功してほしい。

そして、競り勝ってほしい。


私は、この2人の成長を、いつまで見れるかわからない。


でも、「あなたたちの名前は、村上さんが付けてくれたのよ」と、自慢できるように、

村上くんには、大成してほしいと、願う。










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