第17話

「私たちもやらない?」

「何を?」

「この小説と、同じ事」


幼少の頃の初恋の相手と再会した、50年後に想いを伝えるという話・・・

つまり、50年後にまた会おうということか・・・


今は、20歳過ぎなので、50年ごとなると古希を超えている。

それまで、生きているだろうか?


「じゃあ、まず私たちの子共の名前を決めて」

「本当に僕でいいの?」

「うん」


河原さんは、笑顔で頷く。


「何カ月」

「7か月だけど、今決めてね」

「男の子?女の子?」

「まだ、わからない。出てきてからのお楽しみ」


微笑んでいる。

どうやら、帰してくれそうにない。


「君なら、いい名前をつけてくれる。そう信じてるよ」

「信じてるって・・・」


どうしたものか?


「男の子なら、功暁(かつあき)」

「どういう意味?」

「自分の選んだ未来で、幸せになってほしい」

「素敵な名前だね」


よく使われているが・・・


「なら、女の子なら?」

「瀬梨」

「どうして?」

「競り勝つように」


春の七草のせりも、そういう意味があるんだが・・・


「功暁に瀬梨ね、伝えておくよ」

「どうも・・・」

「ありがとう。そしてごめんね」

「何が?」

「無理やり付き添わせて」

「いいよ。それより、ご馳走様」


河原さんは、指差す。

その先には、高台があり大きな桜の木がある。


「50年後の、今日あそこで会おうね」

「うん。生きていたらね」

「もしものことがあれば、子供か孫に会わせよう」

「うん」


こうして別れた・・・








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