第15話

「ここを読んで、感動したんだよ。村上くんらしいなって・・・」


いちごちゃんが見せたそのページには、イラストではなく、小説があった。

イラストだけでは、物足りないので小説もいくつか載せておいた。


いちごちゃんが見せたのは、その中のひとつだ。

その小説は、ネットでも公開していて、ある程度の評価はあった。

それを載せておいた。


「『初恋』。とてもいい話だね」

「どうも・・・」


初恋・・・

確か、幼少の頃に恋をした女の子に、50年後に再会して、想いを伝えるという話だ。


「50年間も、ひとりの女性を想いつづけるって、素敵だよね」

「実際は、そう上手くはいかないけどね」

「どうして?」

「疎遠になれば消えて行く」

「確かにね・・・でも・・・」

「でも?」


いちごちゃんは、続けた。


「幼少の頃に交わした約束を、双方ともに忘れない。ふたりの愛は本物だね」

「現実は、そうは行かないけどね」


そう・・・

初恋は淡く切ない。

シャボン玉のように、儚く消える。


それでいいし、そうあるべき。


「で、その小説がどうかしたの?」

「内容もそうだけど、気になったのはふたりの名前」

「名前?」


いちごちゃんは、続けた。


「男性の、村神秋雄はどこからとったの?」

「自分の変え字」

「女性の、河原真美は?」

「卒業アルバムから、適当に拝借した」


目の前の女性は、微笑む。


「まさか・・・」



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