第14話

仕方なく席に着く。


だが・・・


「ところで、食べ終わったのに、ここにいていいの?」

いちごちゃんに尋ねた。

「うん。私の両親のお店だから、気兼ねしないで」


いえ、します。


本来なら触れたくもないし、訊かないのがマナーなのだが、尋ねてみた。


「旦那さんは、どうしてる?」

「仕事?」

「うん」


まさかヒモって事はないだろう。

いくらなんでも・・・


まあ、20歳過ぎなんだから、就職浪人でも構わないのだが・・・

いや、大学生だろうな・・・


どうでも、いいんだが、答えようによっては去る。

引きとめる権利は与えない。


「美容師だよ」

「床屋さん?」

「じゃなくて、美容師。隣町で働いている」

「・・・そう・・・」


あの嫌味な顔が浮かんだ。


「女子高生くらいまでって、どちらかというと、ワルに憧れるよね?」

「ああ」

「男子もそうだけど、女子もワルが、かっこいいと思うんだよね」


僕は違います。


「まあ、私もそうだったしね。」

「今も、ワルが好きなんでしょ?いちごちゃん」

「否定はしないが、肯定もしないな」

「どういうこと?」


いちごちゃんは、間を置いて答えた。


「旦那にプロポーズされた時、条件を出したの?」

「何を?」

「いじめはしない。マナーは守るなど、10個ほど」

「わがままだね、いちごちゃん」

「うん。絶対に私の前から消えると思ったんだけど、旦那は全部守ってくれて・・・」


それで、愛が本物と思ったのか・・・


目の前の女性は、僕のような陰キャラ向けではないな・・・


・・・って、世間話になってる。


「君には詫びたいって、いつも言ってるよ

怪しいものだ。


「疑心暗鬼はよくなよ、村上くん」

「いきなり連れ込んでおいて、それはないでしょ・・・」

「そうだね。ごめん」


ダメだ・・・

会話が出てこない。


「じゃあ、そろそろ本題に入るね」

「うん」


いちごちゃんは、僕の本をパラパラとめくり、あるページで止めて、そこを僕に見せた。



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