第12話
「で、村上くん、本題だけど・・・」
「その前に訊きたい」
「何?」
大事な事を、訊いておこう。
「いちごちゃんは、高校時代の友達とは、今は交流あるの?」
「旦那以外で?」
「うん」
僕は、頷いた。
「卒業間もない頃は、会ってかな・・・でも」
「でも?」
「今は、疎遠になったな。時々、年賀状が届くくらい」
親しい仲でも、離れてしまえば疎遠になる。
「でも、いちごちゃんは、引っ越してないでしょ?」
「私はね。でも、みんなが引っ越してる」
「そうなんだ・・・」
「後、旦那も今は、疎遠になってるみたいだよ」
あいつの事は、どうでもいい。
「同窓会とは、やってないの?」
いちごちゃんに尋ねる。
「やってないよ。君のところにも案内来ないでしょ?」
「うん」
「それにまだ、そんなに経ってないし・・・」
疎遠になれば、忘れてしまう。
なら、目の前の女性が言ってた、僕が女の子に(ある意味で)人気があった。
確認は取れないな。
まあ、取る気もないが・・・
「話を戻していい?村上くん」
「うん」
覚悟を決めた。
そうすると、いちごちゃんは鞄から、一冊の本を取りだした。
「これ、なーんだ」
「あっ、その本・・・」
いちごちゃんが、手にしている本。
それは、最近僕が、出した本だ。
赤字覚悟で、少数限定で販売したので、持っている人は少ないが、その中にいちごちゃんがいたのか?
「私、この本を読んで、すぐに君の会いたくなったよ。だから、探してたんだ。ずっとね」
「電話でも、くれればいいのに・・・」
「村上くん、出てくれた?」
多分、出なかった。
「実を言うと、今日君に会ったのは、偶然ではないんだよ、村上くん」
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