第11話

「で、高校2年生の3学期の終業式の後に、離婚して元に戻したんだ」

「・・・そう・・・」


プライベートな事なので、ふれないでおこう。


「訊かないの?村上くん」

「何を?」

「どうして、結婚したのかとか、離婚したのかとか・・・」

「話したくないでしょ?だから訊かない」

「優しいね」


いや、当然の事です。


「で、その後しばらくしてから、今の旦那と付き合うようになったんだ」

「悔しいけど、女子には人気あったからね・・・」

「・・・うん」


どうしたんだ?

少し悲しそうだ・・・


離婚はしたが、その後で愛する人と出会い、幸せな結婚をして、

そして、こうのとりさんが赤ちゃんを運んできてくれた。


何が不満なんだろう?


「で、話を戻すけど」

「話って?」

「君を、誘った理由」


あ、すっかり忘れた。

でも、たいした理由ではないだろう。


「いっとくけど、私の名前を思い出すまでは、逃がさないわよ」

「へいへい」


でも・・・名前って・・・


「名前は、ファーストネームだからね」

「ファーストネーム?」

「今の、ファミリーネームは、もう思い出したとおもうから」


ああ。

僕をいじめていた、あの男。


屈辱だけは忘れない。


あの男に惚れた、目の前のいちごちゃんも同類だが・・・

反省しているというのも、ウソだろう。


卒業してまで、いじめをするのか?


「あー、また疑った顔してる」

いちごちゃんは、怒る。


「言ったでしょ?私が君を誘ったのは、真面目な理由があるって」


いちごちゃんの顔は、真剣だ。

でも、さっき旧姓でいいって言ってたような?


「ファミリーネームだと、思い出しかねないのでやめた。

やはり、ファーストネームを思い出してもらうまでは、逃がさない」


女は魔物だ。




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