第9話

「ところで、いちごちゃん」

「何?村上くん」

「そんなに、プライベートな事を、話していいの?」

「どうして?」


いちごちゃんは、不思議そうな顔をする。


「個人情報だし、僕とは親しくないし・・・」

「君は、私の名前覚えてないんでしょ?」

「・・・うん・・・」


例えは、悪いが漫画のモブキャラや、映画のエキストラ・・・

よく見かけるが、名前はわからないという感じだ。


向こうは、僕の事は覚えているようだが・・・


「だから、気にしないの」

そういう問題ではない。


「話は戻すけど、女子は君の感性が好きだったと言ったよね?」

「うん。でも、感性を人前で披露したことは・・・」

「文化祭の時の、メイド服は、君のデザインだよね?」

「一応・・・」


間違いなく却下されると、思っていたが・・・


「その時、女子とふたりで案を出し合ったの、覚えてる?」

「うん・・・かすかに・・・」


そういえば、喫茶店で女子とふたりで、頭をひねったような・・・

今もだけど、女子に免疫のない僕は、ドキドキして殆ど覚えていない。

記憶から、こぼれ落ちている。


「もう、気付いたと思うけど・・・」

「何が?」


「その女子が、私だよ。村上くん」


固まってしまった。

驚きにではない。

ありきたりあん、展開にでもない。


目の前にいる、女性。

かなりというか、完全に容姿が違っている。


絶対にウソだな。

冷やかし確定だ。


今、どうやって逃げようか?

頭の中を、それが試行錯誤した。


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