第7話

「文化祭の出し物は、何をしたか、それくらいは覚えているよね?」

「ああ。3年とも模擬店だ」

「それだけ?」

「うん」

「本当に?」

いちごちゃんは、じっと見つめてくる。


いちごちゃんが、人妻でなく、妊婦でもなかったら、ときめいたかもしれない。

でも、さすがにそれはない。


「ねえ、村上くん。それだけ?」


僕は、記憶の糸をたぐり寄せた。

ぐいぐいと、たぐりよせた。


そう、ぐいぐいと・・・


あれ?ということは3年間、いちごちゃんとは同じクラスだったのか?

3年生の時は、覚えている。

遠巻きで見ていただけなので、名前は意識しなかったが・・・


でも、1年と2年は、全く覚えていない。


「やはり、今思い出したんだね。3年間同じクラスだよ」

いちごちゃんに、心の中を読まれていた。


「ねえ、思い出せない?」

ひたすらこっちを見る。

眼がなにかを、教えようとしている。


「・・・確か、2年の時に・・・」

「うんうん」

いちごちゃんは、興味深深で訊いてきた。


「クラスの男子のだれかが、メイド喫茶にしようと提案したんだが・・・」

「それで?」

「確か、全員が賛同して・・・」

「うんうん」

「そのメイド服を、僕がデザインさせれたような・・・」


いちごちゃんは、ぱちぱちと拍手をする。


「よく、そこまで思い出せました。えらいえらい」

頭を撫でなれるが・・・


あまり嬉しくない。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る