第6話

「では、村上くん」

僕は、どうも落ち着かない。

まあ、普通は落ちつかないか・・・


「名前・・・教えてくれないよ…ね?」

「うん」

彼女は即答する。


「でも、それだとどう呼べばいいかわからない」

「好きに呼んで」

「じゃあ、奥さん」

「知らない仲じゃないんだし・・・」


いえ、僕は君を覚えていないので、知らないも同然です。


「じゃあ、いちごちゃんと呼んで」

彼女を見ると、どうやらそう呼べと、眼で訴えている。


「わかったよ。いちごさん」

「さん?」

「いちごちゃん」

「よろしい」


ふんぞり返っている。

疲れる・・・


「とことで、いちごちゃん、要件は手短に頼む」

「うん。時間は取らせない」

いちごちゃんは、微笑む。


「こうしていると、あの頃を思い出すね」

「あの頃?」

「高校時代」

「高校時代?」

「うん。あの頃は楽しかったね」


やはり、いちごちゃんは記憶が混同している。

僕は、いちごちゃんとは、話した記憶がない。


「やはり、村上くんは覚えてないね」

「どういうこと?」

「一度だけ、君とこうして喫茶店でお話したことはあるんだよ」

「誰かと、勘違いしているよ・・・いちごちゃん」

「ううん。君で間違いない。女の子はその記憶ははっきりしているから」


そういうものなのか?」


「それは、いつの事?」

「文化祭の時」

「文化祭?」


いちごちゃんは、頷いた。




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