第5話
「美味しいでしょ?村上くん」
「うん。なかなかいける」
「鹿児島から直送した、黒豚よ」
にこにこしながら、僕を見つめている。
「ここは、私の親戚一同で経営してるんだ」
「そうなの?」
「うん。だから、従業員も全て親戚」
「大家族なんだね」
「うん。旦那は関与してないけどね」
「村上くん、問題」
「何?」
「豚と馬が喧嘩しました。どっちが勝った?」
「トンカツ食って、うまかった」
「正解」
それだけ言うと、彼女はようやく自分のトンカツに手をつけた。
「私、猫舌なんだ」
「そうなの・・・」
彼女はゆっくり食べている。
30回はかんでいるな・・・
僕は、辺りを見回した。
隠しカメラはないか?
ドッキリではないか?
疑心暗鬼になるのも、当然だろう。
僕は、食べるのは早い。
元々、食が細いせいもあるが、あまり食べるのは好きではない。
対して、彼女はたくさん食べている。
まあ、おなかに新しい命があるからな・・・
彼女が食事中、僕は鞄からノートを取り出した。
そして、ペンを走らせた。
「何してるの?」
案の定、彼女が訊いてくる。
「課題」
「学校の?」
「うん」
「そういうのは、図書館でやりなさい」
その途中で、呼びとめたのは君だよね?
しばらくして、彼女の食事がおわった。
たくさん、おかわりしていたようだ。
「では、本題に入るね、村上くん」
「ここでやるの?」
「うん。あっ、疑われるといけないから、会計だけ済ませるね」
「親戚なのに?」
「ううん。君の分」
彼女は、レジで会計をしにいった。
この間に、帰ろうか?
「逃がさないわよ。村上くん」
「帰っていい?」
彼女に訊いた。
「私の名前、思い出した?」
いるしかないみたいだ。
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