忘却の底のララバイ(遠い思い出)

遠い昔の

切ない記憶

あなたはとても

幼くて


泣いてばかりで

気難しくて

そんなあなたに

手を焼いた


彼には妻が

いたのだけれど

わたしはそれを

奪ったのよ


いつか天罰

下ると言うけど

まだ若かった

愛していた


ララバイあなたは

そして産まれた

ララバイわたしの

愛しい子





わたしは彼を

信じたかった

必ず妻と

別れると


そして酒乱の

彼はいつでも

暴れた後に

抱きしめた


「お前なしでは

生きていけない」

そう言われたら

許せたの


おんなじことが

繰り返される

見え透いた嘘

分かってたの


ララバイ孤独に

耐えられるほど

ララバイわたしは

強くない





でもわたしには

限界なのよ

こんな暮らしの

底なし沼


だからごめんね

あなたを一人

置いて行くしか

道はない


あなたの兄は

連れてくつもり

だってあなたに

疲れたのよ


わたしはすでに

心に決めた

だからごめんね

さようなら


ララバイ一人で

生きてて欲しい

ララバイ私は

むごい母





玄関にまで

見送りにきて

どうしてわたしを

見つめるの


つぶらな瞳で

じっと見られて

わたしの心を

揺さぶって


思わず口に

してしまったの

「あなたも一緒に

来ますか」と


不安な気持ち

何も言わずに

ただ頷いて

ついて来た


ララバイ涙を

抑えきれない

ララバイあなたの

顔を見て






しっかり握る

小さな右手

「捨てないでよ」と

叫んでいる


そしてわたしは

気付かされたの

この子を置いて

行けないと


もしもこの子を

置いて行ったら

この子の命

先はない


ごめんね坊や

あなたの母は

独りよがりで

幼な過ぎて


ララバイ一緒に

この家を出て

ララバイあなたを

守るからね





わたしは弱い

母さんだった

もう大丈夫

離さない


あなたのためにも

立ち向かうのよ

覚悟を決めて

引き受けて


そうは言っても

一人の女

さてこれからは

どうしよう


とにかく生きて

考えようよ

何とかするよ

ケセラセラ


ララバイ ララバイ

ララバイ ララバイ


ララバイ ララバイ

ララララララ…







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