詩集「貼紙禁止」という貼紙

ラバーズ・フェア / 詠唱

あの日の映画良かったね

（誰と見たのかな）

純粋で無垢なヒロインなの

（僕は薄汚れてしまったよ）

今も思い返すの

（思い返したくない）

あんなふうになれたらと

（すべて幻想なんだよ）

晴れた日のドライブ良かったね

（あそこはどこだろう）

桜のトンネルくぐったね

（暗闇のトンネル果てしなく）

澄んだ空気を胸いっぱい

（淀んだ排ガス吸い込んで）

綺麗な気分になれたっけ

（重苦しい気分は覚えてる）

わたしの誕生日忘れない

（とうに過去のこと）

真珠（パール）の指輪（リング）のプレゼント

（早く捨てておくれよ）

これでもう一度頑張れるの

（無理しなくていいから）

あなたの愛を確かめて

（それは本当の愛じゃない）

あなたと行った夏の海

（濁りきった海）

眩（まばゆ）い太陽に照らされて

（身も心も焦がされて）

幻惑されたあの夏

（分かっているだろう）

わたしの小さな思い出

（あいつと君の影法師）

クリスマスイブの夜には

（次の夜君はどこ）

ケーキに蝋燭（ろうそく）灯（とも）したね

（風前の灯火（ともしび）かも知れないね）

愛は永遠（とわ）に続くと

（永遠には続かない）

信じて火を吹き消した

（愛の火も吹き消された）

あれは僕の誕生日

（なかなか言えなくて）

君は突然『別れよう』

（前からずっと思ってた）

あふれ出す思い出

（わたしを忘れないでね）

涙とともに流そう

（本命が現れただけなの）