ボクサー
産まれた時からフツーじゃなかった
不倫の果てに産声あげた
親戚達は白い眼差し
僕はここにいてはいけないのか
何処を
存在否定のその結末は
この拳だけが知っているだろう
皆上辺ではいい顔をして
僕に本当のことは言わない
でも僕は感じているんだ
望まれない人間であることを
嘘、噂、蔑視…
僕は燃えて
この拳を叩きつける場所へ
何万回も響くサンドバッグの音
いつも同じことが繰り返される
それでも僕は続けていくんだ
炎の拳で切り裂くために
スパーリングで叩きのめされても
また何度でも立ち上がればいい
地獄のような練習をして
ついに見つけた
“オーバーハンド”を振り下ろすまで
まだ戦いすら始まっていない
夢、幻、現実…
いよいよ試合のゴングが響く
相手は見知らぬ無名のファイター
何の恨みも憎しみもない
それでも戦うのが僕の使命
だけどもジャブが届きやしない
相手は余裕で様子を見てる
拳を交えて分かったんだ
相手の方が格上だって
僕は焦って手も足も出ない
一方的にパンチを喰らう
それでも信じ続けるんだ
学び
大振り、空転、被弾…
あいつの左のダブルに続いて
ボディとフックが僕に炸裂
意識が刈られてマットに落ちる
何が起きたか分かりはしない
僕はとにかく立ち上がるだけ
……一体何のためだろうか
疑念と邪念の渦をかき消し
拳を上げて
まだまだやれると言い聞かせている
もう力など残ってないのに
僕は魂のフルスイングを
奴は繰り出すカウンターパンチ
壁、挫折、崩壊…
打撲、裂傷、骨折、流血
それでも僕はまた立ち上がる
僕の意識はとうに無いけど
僕はずっと
無意識にとる
最後の一撃喰らわすために
磨き続けた
“オーバーハンド”を叩き込むために
フェイント交えて右ストレート
左ボディから左のフック
そして“炎のオーバーハンド”は
……虚しく空を切り裂いただけ
衝撃、陥落、
大の字で見るリングの
無数の恒星は
またもう一度立ち上がろうと
リングのロープにしがみ付いて
コーナーポストにもたれかかる
レフェリーは僕を抱きかかえると
両手を挙げて
それでも僕は立ち続けてる
一体何のためだろうか……
何かが僕をそうさせている
誰かが僕を立ち上がらせる
あなたは、一体、誰…
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