第56話 戦いの後に

ーー昼過ぎ


ノアシップとの戦闘が終了し俺はカグヤとともに報告のために本部へと向かっていた


「ったく、あの教師……どんだけめんどくさがりなんだよ」


ヴェインは報告を俺たちに任せると学園へとまっすぐ帰ってた


「あの人もいろいろと忙しいんじゃないですか?」


「そうかもしれんな。そんなことより……」


俺は横で歩くカグヤにしっかりと目を合わせる


「なぜお前があの戦いに助っ人として来たのか説明してもらえるな?」


「は、はい……」


カグヤは反省の色を見せると同時に学園長に転移されるまでの経緯を事細かに説明してくれた


「なるほどな。しっかし、お前が盗み聞きなんて珍しいな……。それに学園長もなぜ最後まで知らないフリをしていたんだ?」


学園長ほどの人物がカグヤの気配に途中まで気づかないというのは妙だ。


「はい……私も学園長室のドアを叩こうとした時に中から話し声が聞こえたので後ほど訪ねようと思ったのですが不思議と足が動かなかったのです……」


(だとするとますます変だな。ドアの前にずっと立ってるような気配を感じたら普通は声をかけるはずだ。それが転移寸前まで気づかないなんて)


「あの! アルスさんのお体は大丈夫なんですか!?」


考え事をしているとカグヤから心配そうな目で見つめられる。


「安心しろ、ヴェインが使ってくれた超回復魔法だっけか? あれでほとんどの傷は治ってる」


本来ならこうやって街中を歩くことも出来ないはずだったのだが特別な鉱石を用いることで本来ではありえない効果を引き出すことができる、聖騎士専用の高等魔法で傷をいやしてもらったのだ。


「あんな力を秘めた鉱石はなかなか見たことないがないな」


「私も初めて見ました」


魔法ということで俺はあることを思い出す


「そういや、まさかお前ら2人があいつらの天敵になるだなんて想定外だな」


本来ならあの2人は《黒鉄》という二つ名を持つ最強クラスの魔法師が助けに入ってようやく五分五分になるほど強さだ。正直なところヴェインはともかくカグヤにはそこまでの実力はない。


だが、実際にカグヤは敵の異能をほぼ完封し神器の力であのデカブツを圧倒していた。それだけじゃない、ヴェインの支援魔法が発動してからはグラサンも俺たちを転移させることが出来なくなっていた


「偶然、という言葉で片付けるには危ない気がします……」


(たまたま、《黒鉄》クラスの魔法師が全員出払っていて、たまたま、ヴェインの手が空いていて、たまたま、カグヤがその場面に出くわした、か……。)


「……まるで誰かの手の上で踊らされてるみたいだな」


駅で電車を乗り継ぎあと少しで本部が見えるという距離まで来たところでふと違和感を覚える


「……人の気配が全くしない」


「私も感じました……」


さっきまで人で溢れかえってたのに気づくと周りには人1人もいなかった。異常な光景に俺たちは無意識にCAWへと手を伸ばす


「そんなに警戒しないでくださいよ」


その刹那!


背後から声をかけられると同時に俺とカグヤは地面を蹴り距離を取りすぐさま魔法を発動させる


稲妻の一閃と暴風の刃がフードを被った男へと襲いかかる


「いい反応ですね」


すぐさま地面へと手をつけ詠唱をする素振りを見せると放った魔法は見えない何かに阻まれた


「何者だ?」


アルスがそう聞くと男は申し訳なさそうに両手を上げ戦意がないことを伝えて来た


「こんな方法であなたたちを呼んだのだから怪しまれて当然です。しかし私たちには敵意は全くありません」


「私"たち"?」


「自己紹介が遅れました。私は《因果の巫女》を守る騎士の1人であり、その騎士団長を務めるアインズ と申します。ささ、あちらの方で我が主人マスターがあなたちをお待ちです」


そう言い終えると近くのカフェへと手を伸ばしたのだった

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