第51話 違和感
俺はある呪いによって体を蝕まれている。その呪いは普通に生活する上ではなんの問題もない。なぜならある能力を使用すると発動するからだ。前まではそういったこともなかったが悪神竜との戦いにおいてどうやらかかったらしい。いや、自分自身で呪ったんだろう。
以来、俺の中に眠る暴竜王の力を使うと体にそれ相応のダメージが発生する。しかし、この呪いには一つだけ抜け道がある。それは
(暴竜王の力の一部である俺の神器でも能力とあの魔力を使用しないなら普通の武器として扱うなら呪いは発動しない……つまり超優秀な武器として使用できる!)
虚空から黒い煙のようなが出現すると次第に形付いていき、ナギナミ国で見られる刀と呼ばれる武器を模す。
「それが君の神器なのね。神器持ってるだけでも羨ましいよ全く!」
(これが話に聞いていた
「っ!!」
いつの間にか能力で俺の懐に潜り込んでいたグラサンが突き上げるように拳を打つ。その攻撃を刀の腹で受け止めると同時に拳が消える
「
背後からその声が聞こえてくると熱気も同時に感知する。
「くっ……速い」
迫ってくる炎を魔力障壁で凌いだのは良いものの背後に転移してから攻撃までのタイムロスの無さは流石のものだ。だが違和感も少し感じる
(こんなに魔法の発動が速いのなら中級魔法ではなく上級魔法の方が効果的ではないのか?)
さっきの攻撃も威力が中級魔法の域から出ないからなんとか防げた。上級魔法だったらあんな障壁なら簡単に破ることができる
(速度重視で魔力で守られる前に倒すって戦法なら納得できるが俺相手には通用しないとわかっているはずだ)
恐らく俺の異能は奴にバレている。だから速度で有利を取るのは難しいと理解しているはずだ
(何かひっかかるな……)
「やっぱり駄目か。少し隙ができれば掠りはしてくれるかなと思ってたんだが簡単にはいかないな」
こちらの発言に対して刀を持ったアルスは無言を貫いている
(何か考え事をしているのか。いや、彼ほどの魔法師から当然か。どうして上級魔法を使わないのか、俺も上級魔法が使えるならそうしたいさ)
再びファインディングポーズを取り体勢を調える
(残念なことに俺には殆どの上級魔法に適性がない。だから自分の肉体と使える魔法を組み合わせてそれに匹敵するようにする。それが俺の戦い方だ)
アルスが接近し、刀を横薙ぎにする。
「見え見えだ!」
予備動作からもこの攻撃を予測していたのか同じように走り出していたグラサンはしゃがみ刃から逃れる。
「だろうな」
一瞬、魔力を感じると空振ったように見えた刃は進行方向を九十度変え、再びグラサンの首を狙う
(俺の拳よりも刀の方が速い!)
転移を発動させアルスのリーチから離れた位置に一度撤退する
(異能で無理やり攻撃の方向を変えたか)
足元を爆発させ再び肉薄するアルス。今回は攻めるのではなくあえて防御にまわることでカウンターを狙うグラサン。凄まじい金属音と余波が山の中を駆け巡る
迫り来る刃の横腹を突くことでその攻撃の軌道を逸らす、しかし、逸らされることをわかっていたかのように綺麗に次の攻撃の姿勢に入り、再度、肩を狙い刀を振るう。
(この野郎……!!)
一瞬、戸惑ったが持ち前の格闘センスでなんとか防ぎ、そのまま足を踏み込みアルスの腹部を狙う。しかしこれもまた上手く防がれてしまう。そういった攻防を何回も続け、永遠に続けるのかと思われたその時!
グラサンが離れた位置に突如転移した。
「悪いが、これ以上は付き合ってられねぇな」
ある情報が彼の脳内に伝わってきたのだ
(そういや、なぜ魔力障壁なんていう不確定なもので防いだんだ? それにさっきのやりとりでも一度も使ってない。神器の能力を使えば安全安心確実に避けられた場面もあったはずだ。条件や代償があるから使うのを躊躇った? まぁそれは置いといてやっと目覚めたのかあいつは)
指を鳴らすとある男がグラサンの隣に出現する。
「どういうことだ……!」
「どうもなにもさっきお前が気絶させた男じゃないか、なぁオッタル?」
「ネメシス・インパクトォ!」
魔法名を大きく叫ぶとオッタルの大きな拳に術式が浮かび上がり、アルスに向かって突き出す。
「っ……!」
すると、腹部を勢いよく殴られたように、いや、吹き飛ばされたかのようにして背後の木に叩きつけられる。肺から全ての空気を押し出された、折れた肋骨が臓器に刺さり、吐血した。
いつものように魔力で全身を厚く覆う前に攻撃を受けたためほとんど防御無しで受けたようなもの、奇襲に近い形だ。
(考えられるとしたら魔力を気に変換したものを防御に当てることで膨大な情報量を少しでも減らし、起き上がるまでに回復してたのか……!)
今まで見たことのない術式を目の当たりにし、好奇心さえも湧き上がってくる。するとグラサンが隣にいる大男の頭を引っ叩いた。
「この大馬鹿! 死んだらどうするんだよ!?」
「わ、わりぃ……てか威力に関しては俺じゃなくてあいつ自身に影響するんだから自業自得じゃないか?」
「確かにそれはそうだが、なんとかしろ。あいつは殺してはならん、絶対だ」
「無茶言うなよ」
朦朧とした意識の中そういった発言だけが耳に入ってくる。体は……大丈夫だ、まだ動く。問題があるとしたら
(こいつら相手にどの程度まで闘えるか……久しぶりに
「ほぉまだ立つのか。面白い」
あの攻撃を耐え、立ち上がり、再び相対しようと口から血を流している剣士が刃をこちらに向けていた
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