第44話 代表生

「おーっす! アルスとカグヤ」


「おはよう、ナオト」


朝から元気なことだと思いつつ挨拶を返した。今日は休日ではあるがある事情により学園の訓練場へとカグヤと足を運ぶことになった。この訓練場は模擬試合場の規模を大きくしたような場所だ


「さてと! これで全員揃ったか」


(全員? ああそういうことか)


控室の方から数人こちらに歩いてくるのが目に入る。リーナとリン、それに他クラス生徒であるカインと紅蓮たちだ


「ふーっみんなわざわざ休みの日に集まってくれてありがとうな! まさか俺も魔法学戦の代表生に選ばれるなんて思わなかったけど、とりあえず魔法学戦まであと二週間しかないこの状況で俺たちは切磋琢磨し、来たるべき日に備えるためにみんなを呼んだわけだ」


そう、俺たちは魔法学戦の代表生に選ばれたのだ


―――


俺はいつも通り目が覚めると、携帯にメールが届いてるのを確認し、目を通していた。すると、学校から直接俺宛にメールが届いていたので本文を確認するために画面をタップした。その内容は前回のテストと座学の成績からあなたは代表生にふさわしいとのことだった


後に目覚めたカグヤにも同じようなメールが届いたいた。カグヤが選ばれるのはまだわかるが、正直、俺が選ばれる理由がわからない。実技も四十点と決して高い点数ではないはずだ。しかしダメ元でカグヤに理由を聞いてみると、実技のテストで四十点を超えられたのは学年で三人だけとのことだった


それもそのはずあんな内容のテストなんて誰も想像してず、対策どうこうの話どころではなかった。ゆえにほとんどの生徒は魔法式を完璧に起動することができなかったらしい


今回選ばれた七名の代表生は実技の点数の上位七名を選んだだけだ。朝っぱらから頭を悩ましているとナオトからメールが届き、今に至るということだ


―――


「言っておくが、俺は今ヴェイン先生に稽古をつけてもらっている。だから毎日ここで鍛錬できるわけはないがいいか?」


「大丈夫さ! みんなと鍛錬するのは互いの実力を把握するためだから、無理に来る必要はないよ。たまに来てくれたらそれで満足だぜ!」


「それで、どのような鍛錬をするか決まっているのかい?」


「うーん、とりあえず模擬戦をしてそこから何か気づいた点などがあればお互いに報告しあうって感じだな。団体戦は例年通りなら三人一組のはずだから。一人は余ると思うけどその人には試合のレポートをお願いしたいと考えている。とりあえず、訓練場を借りられている間はここを最大限に活用できるようにしたいかな」


(ナオトの割にはしっかりと考えてくれているんだな)


意外と先を見据えて行動しているナオトに俺は心の中で称賛を送る


「ま、とりあえず一回やってみるか!」


ナオトは端末を操作し、模擬試合モードに切り替える。頭上にホログラムのようなものが出現し、二つ空白のようなものが表示されている


「戦う順番はランダムに映し出されるから自分の名前が出たらCAWを持ってここで準備完了をしてくれ。それ以外はあそこの観客席で待機だ」


模擬試合場のように観客席が周りをぐるっと囲んでいる。そこからはちょうど戦闘場を見下ろせるようになっている


説明を終えたナオトは端末を操作し何かを起動させるとホログラムの空白に名前が埋め込まれる


(まじかよ!)


どうやら一戦目は俺と紅蓮の試合のようだ


「ちょうどいいなアルス、俺がどこまで強くなったのか君に見てほしいと考えていたんだ」


紅蓮は剣のようなものを手に持つとそのまま中央へと向かっていく。俺と紅蓮以外の連中はすでに観客席へと移動していた


「全力でかかってきな」


自信に溢れた紅蓮に対し俺は彼だけに聞こえるように声を発する


「全力を引き出させるよう精々頑張ってくれ」


黒のCAWと白のCAWを服の中にしまい、準備完了と表示されたホログラムに手で触れる。それと同時にスタートの合図が部屋に響き渡った

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