第14話 開戦前

アルスたちはCAWの準備をしてから下へと降りることになった。アルスのCAWケースにはトリガー型の補助デバイスが収納できるようになっている特注ケースで、そこから一つ補助デバイスを取り出した。


(このCAWであいつに勝つにはこれが最適解だろう)


俺たちのグループは残り者同士が寄り添いあってできたグループなので、連携についてはどのグループよりも自信がない。


「ようやく、だな。」


俺たちが向かうと、すでにジェイルは開始の合図を出すスクリーンを開いており、やる気に満ち溢れていた。


「これより! 最後の試合を始める!!」


開始の合図がなると共に俺たちはCAWを構えた。


―――


目を覚ますと視界には真っ白な天井が視界に映し出された。


(ここは……)


体を動かそうとすると激痛が走り、体を上げることさえままならないでいた。


(そうか、俺は負けたのか。)


先ほどの試合を思い出すと悔しさでたまらなかった。


(くそっ……! 本気を出しても手が届きそうになかった……! どうやったらもっと強くなれるんだ……)


すると紅蓮はあることを思いつき、自分の寝ていた時間を確認しようとする。周りに時計がないか確認するがそういったものは見当たらなかった。


「一体どれくらい寝てたんだ……」


すると横にいた女子生徒が答えてくれた。


「30分ぐらいよ。」


どうやら上級生の保健委員なんだろう。


「あなたの回復速度には驚いたわ。まさかもう目を覚ますなんて」


紅蓮は体を起こそうとしたが、まだ動けそうになかった。


(恐らく最後のグループのテストが行われているだろうが、今行けばあの人の試合を少しでも観察できる……!)


「だめよ。肉体的ダメージが大きすぎて脳への影響がとんでもないことになってるから安静になさい。全く、あの団長さんは!」


俺は制止を無視して無理やり体を起こすことに集中する。いたるところの筋肉から悲鳴が聞こえるがなんとか体を起こすことができた。


「俺は……! 強くなりたいんだ! 誰にも負けないぐらいに…! だから行かせてください……!」


すると女子生徒は呆れたように答えた。


「一人で歩けるならいいわよ。」


(俺は強くならなくちゃいけない。そのためにはなんだってやってやる!)


俺は全神経をベッドから出ることに集中し、足を地面に下ろし、立つことに成功した。


「嘘………」


紅蓮はそのままゆっくり模擬試合場へと向かった。


―――


「おりゃぁぁ!」


ヴェインは開始と同時にこちらへと突っ込んでき、そのまま生徒たちをなぎ払っていた。


「ま、まずいよ……」


「最初から無理だったんだ。」


生徒たちは半ば諦めたような状態だったが、それでも抵抗は続けていた。


残り人数があと4名になったあたりでヴェインは魔法の発動準備に入った。


「特別にに見せてやろう。最上級魔法というのを」


凄まじい魔力がヴェインのCAWを包み込み術式構成が始まった。


(それはやりすぎだ。肉体的ダメージの状態で受けたら動かせるもんも動かなくなるぞ。)


アルスの立ち位置は現在、グループの一番後ろだった。他の生徒にバレないよう少しずつ後ろへと下がっていたのだ。ここからなら全員が見渡せる。


「仕方ない……」


俺はCAWを起動させ引き金を引いた。


「無属性魔法 振動波ウェーブ


CAWから魔力の波のようなものが放出され、触れた3人の生徒は気絶した。そしてアルスは続けて魔法を発動させた。


「対抗魔法 術式破壊バーストプログラム


その魔法はヴェインの構成中の術式を破壊し、魔法式の構築を強制的にキャンセルさせた。


「………どういうつもりだ?」


「見ての通りだ。あんたが最上級魔法を使おうとしたからそれを止めた。」


「そんな魔法使えば、外傷はないとはいえ無事で済むとは思えない。だから俺がその対象を先に消した。」


「へぇ……」


ヴェインは保健委員を呼び出し、生徒たちを運ばせた。倒れた生徒が全員が運ばれ、この場所に俺とヴァインだけが残るとヴェインは口を開く。


「じゃあ改めて。俺は元騎士団団長で現教師のヴェインだ。」


「アルテマ国軍所属 特級魔法師のアルスだ。二つ質問いいか?」


「構わんぞ」


「こんなテストに意味はあるのか? それになぜ俺のことを知っているの関わらずあんなことを言ったのだ?」


あんなことというのは開始前のヴェインの発言である。


「まず一つ目についてはこれは今の実力を見るためだけのテストだ。成績に一応入るが生徒が負けるのを前提にして評価基準が定められているから安心しろ。このテストを通じてこれからの授業内容に少しアレンジを加えたりもする。それにお前らは《英雄の世代》だろ?」


「そして二つ目これは本気のあんたと戦いたかったからだ。手を抜く気満々だったろ?」


図星を突かれて言い返すことが出来なかった。


「言っておくが手を抜いたら評価点なしだからな。どうなっても知らないぞ。」


そう言い終えるとヴェインは構えた。


「さて話は終わりだ。始めようぜ。」


「ああ」


そして再び開始の合図がなった。

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