第13話 燃え盛る炎

ヴェインによるテストは再び再開し、二試合目が行われたがそれも一瞬だった。ヴェインは一試合目とは打って変わり、今度は近接戦闘のみで生徒たちを圧倒した。


「一体何をテストしてるんだ、あの教師は?」


アルスは次々となぎ倒していくヴェインに対しての疑問を口にした。すると近くにいた紅蓮が代わりに答えてくれた。


「もっともだな。直接戦わなければわからない、みたいなことでも探してるんじゃないか。」


「熱血だな。」


試合の終了を知らせるブザーが鳴り響くと、紅蓮が立ち上がった。


「だが、次はそういかない。俺が止めてやる。」


そう言い残し、紅蓮は仲間とともに下へと降りていった。


一試合目以降、保健委員が近くで待機しており速やかに生徒が医務室へと運ばれていった。


そして入れ替わりに紅蓮たちが入場した。その手には剣のようなCAWが握られている。


「次の相手はお前らか! おっ、新入生主席の西条紅蓮のグループだな!」


「先生、俺らは他の生徒とは違いますよ?」


「それは楽しみだな」


短く挨拶を終えると機械によるカウントダウンが始まり、その音は試合の始まりを知らせた。


紅蓮たちはすぐさまCAWに魔力を流し、魔法の発動を行おうとしたがそれよりも早くヴェインが紅蓮のグループへと接近している。


「とりあえずまとめて散れ」


持っていた大剣を突き刺し、グランド・ウェーブを起動させようとした。


「ちっ! 術式変換! グランドウェーブ!」


紅蓮は発動させようとしていた魔法式の構成を変化させ、ヴェインの魔法を相殺させた。しかし、相殺しきれず近くにいた仲間が頭を抑えた。


「大丈夫か!?」


「あぁ! なんとかな! 助かった紅蓮!」


どうやら相殺によって威力が落ちていたので気絶までに至らなかった。


「ヴェインさんのあの魔法、結構脳が揺れるから気をつけた方がいいぜ……!」


「わかった」


「紅蓮いけるぞっ!」


術式の構築に完了したであろう他の生徒がヴェインに向け魔法を発動させた。


風霊の刃エアリアルエッジ!」


「雷電!」


大地の怒りブレイクロック!」


そのほかにも大量の魔法が襲った。ヴェインは襲いくる魔法を光のカーテンで防ぐのではなく、身に纏うことで防御したが魔法の威力によって後方へと吹き飛ばされた。


(なぜ防がなかった?)


アルスはこの光景に違和感を感じた。アルスは違和感を調べるために魔力の流れをで確認すると、その答えにたどり着くことができた。


(そういうことか)


後方に飛ばされたヴェインは無傷というわけではなく、少し傷を負っていた。


「やったな! 派手に吹き飛んだぞ!」


「そうだな」


紅蓮も同じく、違和感を覚えていた。


(何か妙だ。確かにダメージを与えることに成功したがなぜか不安な気持ちになる)


ヴェインはゆっくりと立ち上がると大剣を上へと振り上げた。


「あれはっ!」


「最初の試合のやつがくるぞ!」


だが紅蓮はその攻撃がどこからくるか未だに予測がつかなかった。


(どこからくるんだ! 座標の指定もなしに魔法なんて発動できないだろ!)


紅蓮は何かないかと周りを見回し、一試合目の時にグランドクロスをまともに受けた生徒のことを思い出す。


(まさかっ!)


ある一つの可能性を考えると、紅蓮は1人の生徒を指差し大きな声で叫ぶ。


「そいつから離れろ!」


指を向けられた生徒は先程、グランドウェーブによってダメージを与えられた生徒だった。


「おせぇよ」


ヴェインから凄まじい魔力が迸り、呟いた。


「グランドクロス」


指を向けられた生徒を中心として、巨大な光が十字を描き天へと立ち昇った。とっさのことに判断できずにいた紅蓮以外の生徒は光へと飲み込まれていく。


紅蓮は魔力障壁を展開しつつ、射程内から逃れていたため無傷で済んだが、光に飲み込まれた者は倒れていた。


「よく気付いたな! ま、さっき見せたばっかだったし気づくやつも出てくるだろうとは思ったけどお前だけとはな」


「くっ……!」


一旦試合を中断させ、ヴェインはスクリーンを表示させ保健委員を呼んだ。


「こいつらを運んでくれ。このままいても邪魔だ」


すぐさま保健委員が外へと運び出し、再び試合が開始された。


紅蓮はヴェインは睨みつけ、CAWに魔力を流した。


「おおっずいぶんやる気だな。そんなに仲間を倒されたことが嫌か?」


ヴェインが問うと紅蓮は鼻で笑った。


「そんなわけないですよ。弱いから。なにも考えないからああなった。それだけのことです。」


「へぇ……そっちがお前の本当の顔か」


ヴェインは再び大剣を構え直すと同じく魔力をCAWに流した。


「かかってこい」


その言葉を聞いた紅蓮はヴェインへと肉薄し、持っていた剣を振るった。しかし


「そんなのじゃ俺は倒せねぇよ!」


その攻撃を大剣の腹で受け、鍔迫り合い状態へとなる。すると互いに合わせていた刃から炎が出現し爆発が起きた。しかしその爆風は紅蓮を襲うのではなく、ヴェインだけを襲った。


「おっと!」


だが、受けた衝撃を利用し、後ろに飛ぶことによってダメージを抑えていた。


(今のはなんだ? 魔法の反応が一切なかった。まさか異能か?)


「随分とおっそろしい異能だな!」


「あなたほどではありませんよ!」


紅蓮は続けて魔法の発動準備に入った。ヴェインは止めにいくわけではなく、そのまま魔力による障壁を張った。


(そんなの関係ないですよ!)


業火の竜巻!フレアトルネード!」


その魔法はヴェインの周囲を包み、炎の竜巻がヴェインを飲み込んだ。しかし


(見た目は確かにすごいが威力がほとんどないぞ?)


アルスはこの魔法ではヴェインにダメージを一切与えることはできないと考えた。


「こんなもんで俺が傷つくと思ったか!」


「いえ、そんなこと微塵にも思っていません!」


突然、紅蓮は未だにヴェインを飲み込んで燃え盛る炎の竜巻に手を伸ばした。


「弾けろ」


紅蓮がそう呟くとヴェインが居る場所が爆発した。否、が爆発したのだった。その爆風は凄まじく、見学席前には結界が貼られているがそれすらも通り越して熱を感じた。


流石にひとたまりもなかったのかヴェインは大剣をだらりと下げ、立ったまま下を向いていた。


「俺の異能は炎を生み出し、そして魔力で干渉することでその炎を爆破することができる能力だ。」


紅蓮は勝ちを確信し、異能の内容を話し始める。


「だから俺はたとえ、魔法が使えなくても十分に戦えるしあんたを倒すこともできる。騎士団を離れて鈍ったのか知らないが力を見誤ったな」


紅蓮がそう告げ、とどめを刺すために魔法の発動を開始すると、突然、ヴァインの体が動き出した。


「いや、見誤ってなんかいないぞ」


「な、なぜ動ける!」


(直撃していたはずだっ!?)


紅蓮の視点でも、先程のような光のカーテンが出現させる気配もなかったはずだ。だからこそ余裕そうな表情を浮かべながら立っているヴェインに驚いている。


「くっ、フレアバースト!」


待機させていた魔法を発動させると、複数の炎がヴァインの周りに出現し爆発するがそれでも無傷だった。その結果を知り、紅蓮は驚いた表情をしている。


(まぁそう思うよな。流石にあんなのに巻き込まれたら無事とは思えないし、普通に見たら完全にオーバーキルと思われるだろう。だが……)


アルスは元気そうに大剣を片手で持ち、空いた肩をグルグルと回しているヴェインを見つめた。


(あれは歴代最強とかいわれてたんだろ? だったらその程度で終わるわけないだろう。お前の魔法を受けたのも何かあると思ってわざと受けてたみたいだしな)


「ふー熱かった! お前の魔法と異能の組み合わせは確かに良かった。炎を生み出して使う場合、複雑な操作が必要になるだろうし、、魔法にその操作を預けるのは合理的だ」


だが、とヴェインは続けて言い放った。


「それはお前の異能の爆発が強力だったらの話だろ? お前の異能は爆発特化ってわけじゃないんだから過信するのはだめだろう」


ヴェインはCAWに魔力を流し魔法を発動させた。


「異能の合わせ技ってこうやんだぞ。 植物系魔法プラント・ダンス+騎士王の加護」


紅蓮から少し離れた場所に多数の木が出現し、まっすぐ紅蓮へと襲い掛かった。


当然、木は炎に弱い。舐められているのかと思い紅蓮は激昂する。


「舐めるな!」


紅蓮から炎が湧き出し、迫りくる木へと放った。


「どういうことだ……」


簡単に燃えると思われた木は多少燃えた程度の火傷しかつけられなかった。紅蓮はすぐさま新しい炎を作り出し自らを包む。


「ぐはっ!」


炎を何重にも展開することで多少はダメージを軽減したがいくつもの木による攻撃は紅蓮を一気に弱らせた。


「まだだっ……!」


紅蓮は木が消滅したタイミングを見計らって、足元を爆発させ、ヴェインへと迫る。紅蓮はその勢いのまま剣から大量の炎を放出させ焼き払おうとするが、ヴェインは大剣で防いだ。


そのままもう片方の手から炎を生み出しヴェインを包んだが炎がかき消された。


「ぬるいっ!」


ヴェインは大剣を紅蓮へと振り下ろす。紅蓮はその振り下ろしを両手で防ぐことにより一刀両断されずに済んだ。しかし、ヴェインの力によって少しずつ押されていく。


「ちっ…くしょぉ……!」


隙を見てヴェインは重心を一瞬ずらし蹴りを繰り出す。紅蓮は両手で押さえていたため、ガラ空きになった腹にヴェインの足がめり込んだ。  


(あの態勢からあんな威力の蹴りをだせるのかよ)


これには流石にアルスでも驚きを隠せなかった。


「くっ……」


吹き飛ばされた紅蓮はもう一度剣を握ろうしたが、手が麻痺しており上手く握れなかった。するとヴェインが紅蓮へと一気に距離を詰め、大剣に力を込めた。


「やられてたまるかぁぁぁぁ!」


ありったけの炎を作り出し大剣を握る男にぶつけたが、燃え盛る炎の中からヴェインは無傷のまま歩いて出てきた。


「今は力の差を知れ。そしてこの敗北バネにできるよう期待してるぞ」


大剣を振り上げるのを最後に紅蓮は意識を落とした。


―――

保健委員によって運び出され、そこからも試合は進みそしてやっと俺たちの出番が来た。


「次で最後か」


ヴェインは俺を見ると笑った。


「見せてもらおうか、お前たちの今の実力を」

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