幼年期編

第1話 クロニムル家

俺はクロムニル家とよばれる異能家族に生まれた。そして魔力の色のなかでは最弱とされる《灰》の魔力と異能を持っていた


この世界には魔力の色というものが存在しており、《赤》《青》《緑》《茶》《白》《黒》《虹》《無》そして《灰》の色がある。


ほとんどの人は無色の魔力で白と黒以外の魔法なら大体扱えるらしい。


仮に赤色の魔力を持っていた場合、その人物は火に関する魔法が得意になるメリットがあるが、苦手な魔法も存在するというデメリットがある。しかし、それを差し引いても色による特化は無色のそれとは比べものにならない。


白色と黒色のこの二つは他の色の魔法よりも少し特殊なので得意とする色以外の使用は難しいと考えられている。


だが、虹色は特別だ。全属性を変換なしで発動させることができるというどう考えてもおかしい色も存在する。


そして俺の灰色はこの虹色の超劣化色と言っても過言ではないだろう。なぜなら他の色の魔法を発動する際は使用する魔法の色に一旦変換しなければならないからだ。


他の属性に変換して使用するというルールに関してはこの灰色以外の魔力でも共通だが灰色の魔力以外は自身の魔力を全て変換する必要ない。


しかし灰色の場合は流す魔力の部分を100%変換しなければろくに術式も機能しないため、変換する魔力はあらかじめ決めておき、癖を理解しなければならない。


全ての魔力の癖を把握するのはほぼ不可能だ。だからあらかじめ変換する魔力を1つか2つか決めておき、極めるしか灰色には選択肢がない。


それに極めたとしても一瞬で変換させる技術を身につけることができなければただの発動が遅い魔法にしかなりえない。灰色を持つものにしか使えないユニーク魔法が存在するが調べてみた感じロクなものはほとんどなかった。


そして異能だ。異能に関して話す前に、魔力器官について話さなければならない。本来魔力は魔力器官と呼ばれるものから生成されるが異能を持っている場合、魔力器官の魔力の総量や生成量が異能を持ってない者と比べて量が少ないと言える。


ただ、個人差があり、異能を持っていながら魔力の量もずば抜けてるような例外も存在しているらしい。

そして異能というのはそれが開花しなければ異能持ちの魔法師はただ魔力量が少ないだけの魔法師になる。


ざっと調べた感じ、魔力と異能の関係性はこんなところだ。


前者に関しては義務になっているが後者に関しては異能の内容を報告する必要はないとされている

異能は身体能力の延長線上にあるものだとされており、それをわざわざ報告するのは人としてどうかという話になったらしい


「これがこの世界の魔力と異能の仕組みってことか」


俺はこの世界の自分を知るために書斎のパソコンで魔力と異能について調べていた。すると、背後の扉が空き


「またここにいたのね。お父様が探していたわよ?」


「お父様が?」


「昼めしを食べたら稽古だからさっさと食べなさいって。」


「わかった」


「私、お母様に呼ばれてからもう行くね。稽古頑張ってね」


「ありがとう」


そう言いミレイユは足早に去っていった。この家はミレイユと俺そして兄貴とお母様とお父様の5人家族だ。ミレイユは何かと言って俺を気にしてくれる。どうやら俺の異能が目覚めないのを気にしてるみたいだ。


このクロムニル家は代々「障壁ウォール」と呼ばれる異能が受け継がれている。そもそも異能というのは基本的に親のどちらかの異能もしくはその両方の性質を持って生まれてくる。


両方の性質を持って生まれてくるのは極めて稀で、引き継がれる異能は異能の力が大きいものが基本的には引き継がれるらしい。そしてこの障壁は遅くても2歳までに兆候があるらしいのだが未だにその兆候がないらしいのだ。


この障壁こそクロムニル家が貴族として国にいろいろ優遇されている理由である


俺は昼ごはんを胃に流し込んで急いで訓練場に向かった。この家の訓練場は縦横75メートルといった訓練場にしては大きい建物だ。そもそもクロムニル家は自然に囲まれた場所に家を建ててあるので必然的な周りは木々ばかりになる。山が私有地なので結構好き勝手に改造しているみたいだ。


「おう、やっときたか」


そう言い、茶色の髪の毛を後ろで結んだ男性がこちらを振り向いた。この男こそがクロムニル家の現当主

ガフート・クロムニルである。そしてその男と先ほどまで稽古をしていたと思われる、茶色の髪をした好青年、このひとが俺の兄のジーク年は12歳だ。


「アルス、久しぶりだね」


「帰ってたんですか、ジーク兄さん」


「うん、魔法学校の長期休暇だからね」


この国の学校は8歳から12歳まで魔法学校で基本的なことをし、そして12歳から16歳の間は魔法の応用を含む魔法学という学問も入れてしっかりと勉強する、こういう制度になっている。そして12歳までの勉強が一旦終わると長期休暇に入り2ヶ月後また学校に行くということになっている。クロムニル家から通学は厳しいため、別荘を通う本人に貸し出し、メイドと執事を連れて都会の王立魔法学校に通うというのが昔から続けられているみたいだ。

すると、後ろから綺麗な黒色の長い髪の毛をしており毛先がふわふわになった優しそうな女性がこちらに歩み寄ってきた


「あら、また無茶なことしているわね?」


「うん?いや、魔法学校から帰ってきたと聞いてどんなもんか試してただけだぞ?


「あのね、ジークはつい最近帰ってきたばかりなんですよ?それを無理やり稽古に連れ出すなんて……」


その女性から凄まじい殺気が放たれていた


「いや、だから、その、ごめんなさい……」


この頭まで脳筋な男を黙らせたのが俺のお母様である

リズ・クロムニルだ


「ジーク、今は少しでも体を休めなさい。訓練も大事ですがメンタルケアもとてと大切なことよ?」


ジークは少し安堵した表情になると


「わかりました、少し休むことにします」


と言い家の方に戻っていった


「アルス、あなたもまだ5歳なんだから無理に稽古をしなくてもいいのよ?」


恐らく俺のことも気遣って言ってくれたのだろう


「大丈夫です! 俺が言い出したことですから!」


「まぁ熱心な子ね。でも無茶だけはダメよ?」


「それに関して言えば大丈夫だ! この訓練場の魔法の設定で肉体的ダメージは全て精神ダメージに変換されるよう設定してある!」


「そういう問題じゃないでしょ?」


笑顔ではあったが目は笑っていなかった

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