137話 真実の瞬間【2】

 ジーグフェルドは小さく息を吐いた。


「追加する。イズニック殿。プラスタンス殿。ジオ殿。ラルヴァ殿。コータデリア子爵。カレル。ジュリア。バイン司令官。シルベリー司令官。スタンフォード司令官。同行願います」

「宜しいのですか?」

「ここまで一緒に戦って下さったのに。何をいまさらってことですよ」

「畏まりました」

「喜んでお供いたしましょう」

「では。急ぎましょう」


 宰相モーネリーが促した。

 皆が足を進めだすと同時だった。

 ジーグフェルドは片手をスッと差し出した。


「行くぞ! イシス」

「えっ⁉」

「どうした?」

「だって。さっき名前呼ばれなかった……」

「何言ってるんだ。当然一緒だから言わなかっただけだ」

「ジーク……」

「いちばん初めから一緒だったのだぞ。当り前じゃないか」

「ん。分かった」


 イシスはジーグフェルドの手をとった。

 なにやら照れくれくて嬉しい。

 彼女は小さく微笑んだ。


「こちらです」


 宰相モーネリーがドアを開ける。

 国王の私室。

 装飾品で美しく飾られた居間があり、その奥は寝室になっている。

 その居間にサルディスとニグリータがいた。

 周囲を青の兵士たちが囲み剣を向けている。


 入ってきたジーグフェルドを見るなり、ふたりは両極端な反応を示した。

 サルディスは蒼ざめて床に座り込んだ。

 一方のニグリータは眉間に皺を寄せて睨みつける。


「この所業は一体なんですの? 無礼ですよ! ジーグフェルド陛下」


 ニグリータの言葉に今度はジーグフェルド眉間に皺が寄った。


「ほう……。陛下と呼んで下さるのか」

「と、当然です。他にどなたを陛下とお呼びするのですか? この兵士たちをどけて下さいまし」

「それは致しかねる」

「何故でしょう? わたくしは何もしておりませんわ」


 あくまでも強気なニグリータであった。

 そこへ最後尾の扉付近から声がする。


「そうは行きません。あなた様は今回の首謀者のおひとりなのですから」


 宰相モーネリーであった。


「何を言うのです! モーネリー! 無礼ですよ‼」


 顔を赤らめてニグリータが声を荒げる。


「ほう……。そういうからには証拠を掴んだのだな?」


 ジーグフェルドの青い瞳が鈍く光った。


「勿論でございます。こちらに」


 宰相モーネリーは今しがた青の兵士たちから受け取った紙を手に持っていた。

 それをジーグフェルドに恭しく差し出す。

 さらにニグリータがダッフォディル国から連れてきた侍女三名も一緒であった。

 ニグリータの顔が青ざめる。


 受け取った手紙はニグリータの父であるダッフォディル国王からであった。

 ところどころ欠けてはいるが、今回の騒動への関与を示す内容である。

 ジーグフェルドの手が怒りに震えた。

 彼は手紙をニグリータへと向ける。


「これでもまだ関係ないと申すか?」

「そんな紙、知りませんよ」


 手紙と言わず紙というところはまだ賢い。

 しかしジーグフェルドの心は決まっていた。

 また国王の権限に逆らえる者はいない。


「ニグリータ。サルディス。そして侍女三名。この場で死を与える。覚悟せよ!」

「‼」

「ひぃ!」


 死を宣告された全員が真っ青になる。

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