136話 真実の瞬間【1】

 王宮への入り口はたったひとつ。

 中から固く閉ざされている。

 入ることは叶わない。


「中に青の兵士はいないのか?」

「勤務している者たちがおりますが、恐らくランフォード公爵方の兵の方が多いかと……」

「そうなのか……」

「如何いたしましょうか?」

「仕方ない。扉を壊そう!」

「‼」

「宜しいのですか?」

「修復など後から何とでもなる。中へ入ることが重要だ」

「畏まりました」


 兵士たちが扉横の壁をハンマーで壊す。

 開いた穴から国王軍が突入する。

 最初の広場でランフォード公爵たちの兵と衝突した。

 だが、数では圧倒的に国王軍が勝っている。

 残っている貴族と兵士たちを捕縛していく。


 ひと段落してジーグフェルドたちは王宮の中へ入った。

 そこでまた嫌な衝撃を受ける。

 今までの黄の郭や緑の郭や赤の郭同様の光景があったのだ。

 日常的に性的なパーティーが催されていたようだ。

 ジーグフェルドは唇を噛みしめる。


『この王宮までも……。よくもここまで乱してくれたものだ』


 そこへ声がかけられた。


「陛下! ご無事でなによりです」

「!」


 宰相アナガリス=モーネリーである。

 王宮務めの青の兵士五名と共に現れた。


「モーネリー宰相! 無事だったか⁉」

「はい。息災でございます。ご無事のご帰還宜しゅうございました」

「そなたも……。本当に無事でよかった」

「ありがとうございます」


 ジーグフェルドの目にうっすらと涙が光る。

 約半年前。

 この王宮で別れて以来の再開であった。

 しかし、感動に浸っている場合ではない。


「スタンフォードより少し聞いているが、誠なのか? サルディスが王座に座っていると」

「はい。左様でございます」

「では。この乱れた所業は全てサルディスのせいなのか?」

「陛下方の王宮奪還と共に、青の兵士が捕らえております。ご本人と直接お話を

どうぞ」

「分かった。どこにいる?」

「国王の私室でございます」

「‼」


 宰相モーネリーの後に首脳陣たちがゾロゾロと続く。

 内部は依然と変わらず美しく清潔に保たれていた。

 しかし漂う空気は重く淫乱な感じがする。

 ある場所まで来ると、宰相モーネリーは足を止めた。

 国王の私室まではまだ距離がある。


「どうした?」

「緊急事態とはいえ。この先は国王の居住区域です。皆さま全員をお通しするわけには参りません。人選はお任せ頂きたく存じます」

「厳しいな……」

「王家をお守りするのが務めです故。どうかお許しを」

「分かった。任せるが、捕捉はすると思うぞ」

「それは陛下のご自由に」


 宰相モーネリーは選んだ人物の名をあげる。


「クロフォード公爵様お一人です」

「は、い?」


 ジーグフェルドが素っ頓狂な声を発した。


「え? だけ?」

「左様です」

「…………」


 流石のこれは予想していなかった。

 ポリポリと頬を掻くジーグフェルドだった。

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