131話 勝利の予感【7】
ドーチェスター城第二の黄の郭。
そこは伯爵と子爵と男爵位を持つ者たちの住居である。
当然のようにランフォード公爵に与する貴族や兵士たちに自由にされていた。
通常であれば深夜になるまでは開門されてる。
しかし、第一の白の郭での反乱拡大を防ぐためであろう。
固く閉じられていた。
城門を守っているのはランフォード公爵の兵士である。
ジーグフェルドたちの姿を見ても開門してくれるはずがない。
上から弓矢を構えている。
「さて。困ったな」
頭を抱えるジーグフェルドたちであった。
それを打破したのはアフレック伯爵一家である。
「陛下。宜しければそのお役目。我らにお任せ願いませんか?」
「いかがする?」
「我らアフレック伯爵家の弓矢部隊をお忘れですか?」
「あ!」
プラスタンスやジュリアは弓を得意としている。
そのためアフレック伯爵家では特別に弓矢の強化部隊を編成しているのだった。
先の渓谷では出番がなかったため志願したのだ。
「では。お願いする」
「かしこまりました」
プラスタンスは自軍の弓矢部隊に準備をさせ号令をかける。
「放て‼」
弓は美しい弧を描いて第二の城門へと飛んで行く。
上から狙っていた兵士たちを次々に射抜いていった。
「見事だ!」
「ありがとうございます」
「城壁にはしごをかけて、兵士を登らせろ」
「かしこまりました」
ファンデール侯爵家の兵士たちが勢いよく駆け出し城壁を登っていく。
内部では多少の小競り合いの後。
黄の郭の城門が開けられた。
「各屋敷にいる者たちを全員捕らえよ! かかれ!」
「おお!」
広い敷地内を国王軍の兵士たちが走り回る。
屋敷一つ一つを確実に制圧していく。
ランフォード公爵家の兵士や与している貴族たちが慌てて出てきて応戦する。
しかし、多勢に無勢。
降参する者たちが続出した。
他人の屋敷を好き放題に荒らしまわった者たちの末路であった。
数か所の屋敷を見て回ったジーグフェルドたちは衝撃を受ける。
屋敷の管理に残っていた侍従たちは労働を酷使されていたのかボロボロだった。
第一の白の郭から強制的に連れてこられた女性たちが裸で泣きじゃくっている屋敷もある。
「…………」
ジーグフェルドの心が再び痛む。
しかし、彼以上に衝撃を受けたのはイシスとカレルであった。
ファンデール侯爵アーレス救出のためドーチェスター城へきた時を思い出す。
第一の白の郭は何事もなかったように平和だった。
面会した時には宰相アナガリス=モーネリーも特になにも言っていなかった。
とすると、それ以降の短期間でここまで荒廃したことになる。
ペレニアル=ロウ=ザ=ランフォード公爵が息子や娘たちを呼び寄せたあとからであろう。
「くそったれ! 気分が悪くなる」
「…………」
カレルは怒鳴る。
イシスは無言で怒りをあらわにしていた。
こうなると公爵や侯爵たちの屋敷がある第三の緑の郭。
国賓のための赤の郭も心配である。
「陛下。先を急ぎましょう!」
日暮れが迫っていた。
皆疲れているだろう。
だが、誰もここでやめようとは言わなかった。
「分かった! 先へ進むぞ。みな頑張ってくれ!」
「おお!」
ジーグフェルドの言葉に勇ましい声が返ってくる。
白の郭同様に黄の郭にも兵士たちを残す。
彼らは緑と赤の郭の城門へと向かった。
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