第2話 好きです、好きなんです
ふう、と息を吐きかけると白い蒸気がふわふわと古びた天井に伸びてゆく。寒いはずの昇降口も彼を待っている間は全然平気。
多分、きっと、もうすぐ。
「早いな」
「先輩に会いたくて早く来過ぎちゃいました!」
「お前と待ち合わせした記憶はないが………?」
眉を顰めるその仕草も様になる。さすが先輩。
「愛の為せる技ですよ!」
「はぁ、お前はよくそう思ってもないことをべらべらと」
溜息を吐いた先輩は鞄の底をガサゴソと漁る。
「なになに、私へのプレゼントですか!?」
「うるさい、黙ってろ」
バシッと額に軽い衝撃。
「落とすなよ」
ビニールに入ったままのそれを、慌てて掌で受け止める。
「カイロ………!もらっちゃっていいんですか!?」
「………ちゃんと使えよ」
「保存!保存して家宝にします!」
数歩先を歩く広い背中に飛び付きたくなる衝動を抑えて掌のビニールをぎゅっと握る。
「ふはは、なんだそれ。使えって言っただろうが」
振り向いた目尻は、珍しく下がっていた。私は慌てて携帯を手に声を張る。
「もう一回!今のもう一回お願いします!」
いいかげんにしろ、置いていくぞ。呆れたような声に私は慌てて携帯を鞄へしまった。
もう随分と先に行ってしまった背中は、それでも私の視界で止まっている。
「あーもう!先輩大好き過ぎます!!」
私は今日一の告白を投げつけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます