第十章 ライブ!!
「呼んでくれてありがとう……」
ゆづき所属サドンデスのボーカルであるしょうこは、ぼそぼそと聞き取りにくい声でほなみに礼を言った。
「いえ。突然呼んだのは私たちですし、出演してくだ」
「ゆづきから聞いてる……ほなみちゃん……ライブ見てるね……」
ほなみの声に被せてまたぼそぼそ囁いたかと思うと、先ほどまでいた定位置の壁際の隅に、膝を抱えて蹲った。もう一度声を掛けて良いものか。
ベースのたまもドラムのらんも似たようなものだった。仕方なしにトレーネのメンバーは、それぞれに軽く会釈。軽く頷き返してくれるだけ良かったというべきか。
ほなみは一応、文化祭の際に面識があった。ほなみちゃんという呼び方からして、覚えてはいてくれたか。いまいち判断が付かない。
――ゾンビ?
「もしかして、怒ってたりする?」
突然呼ばれたことでトレーネに対して思うところがあるのかもしれない。ゆづきの誘いを断るに断れなかった、とか。
「いやあ、今日はみんないい感じだよ?」
「……そうなんだ」
――いい感じとは?
華やかなお笑いタレントの人間天使も楽屋ではまるで喋らない、というよく耳にする話を思い出した。
「さて」
イリスがステージに上がり、会場であるゼップ東京の観客席を見渡した。
「こうして見ると意外と広いわね」
「本当によかったですね。チケットも売れて」
くらのがディスプレイを表示させる。チケットサイトには完売の文字。
トレーネのネームだけで一八〇〇枚近くは売れた。直前になって前座としてサドンデスが出演すると発表されると、瞬く間にチケットは完売になった。
流石のネームバリュー。
《あのサドンデスが前座!? トレーネとは一体!?》という記事がネット上に出て、公式サイトへのアクセス、PVの再生回数も跳ね上がった。
――絶対に成功させないと。
好意的な意見ばかりではない。ネット上には、データインストールを元に歌って踊るわけじゃないトレーネに対して「下手糞」「素人の方がまだマシ」と言った意見が出ている。
声の感じや踊りのちょっとしたズレから「これ、データ準拠じゃなくて、生で覚えてるな」「すごい」などと言った意見もあるにはあるが極少数だ。気づいている人の方が少ない。ただ単純に下手だと思われている。そんな馬鹿な労力を掛ける者がいるとは、思っていないのだ。
だけど。
見に来てくれる人たちに、恥ずかしくない物を見せないといけない。
やるしかない。
「トレーネのみなさーん! リハお願いしまーす!」
スタッフからの声が上がった。
さあ、もう間もなくだ。
サドンデスの最後の曲が終了する。
それをステージ脇から見るほなみたち四人。今ステージ上では、先行してゆづきがギターを弾いていた。
今更気がつく。ゆづきからしてみればトレーネと合わせて十五曲にも渡る長丁場だ。不安になる。
会場は熱気に包まれていた。
プロのベテランライブバンドから新人アイドルへのバトンタッチ。
お客さんは帰ってしまわないだろうか?
それだけは気になっていた。
「さあー!! ここからは!! 今日のメインステージだ!! いくぜえええ!! トレーネェ!!」
さっきまで楽屋で項垂れていたしょうこと同一人物だとは思えない声がステージで上がっている。
観客席を煽りに煽る。そして、機敏な動きで自身の立ち位置をステージの前方から観客席から見て右手後方へと移して行く。たまもらんも同じだ。スタッフも一丸になって、マイクの撤去、機材配置を大急ぎで変更を掛ける。
ゆづきがギターをスタッフに手渡して、ほなみたちの元へと小走りでやってきた。
「おつかれ!」
「うん!」
ほなみの言葉に軽くハイタッチを交わし、すぐに控室に入って行く。五分もしない内に戻ってきた。衣装チェンジをしている。メタラーのそれからキラキラのアイドルのそれへ。
PVでも使用した白と紅のコントラストが美しい思い出のミニスカワンピース。首と口元にはヘッドセット型のワイヤレスマイク。
準備は整った。
「行くわ!」
「うん」「はい!」「行きましょう」
イリスの気合の入った掛け声にそれぞれ応える。ほなみは黙って頷いた。
――よし。
ステージ上、観客席の照明が一旦落とされ、真っ暗になった。
観客は一瞬ざわめき、しかしすぐに静かになる。
五人がステージ上に踊り出た。足元を確認しながら、それぞれが配置に付く。
渋谷センター街でも一番最初にやった曲――神の怒り。
サドンデスファンを引き止める為の曲でもある。
初めてのライブを一曲目を飾る曲、センターはほなみ。
ほなみは深くゆっくりと息を吐いた。
暗闇の中、たくさんの人間天使が蠢いているのが分かった。
ドドドドドドッ!
ドラムの激しいフィルインが始まった。
続いてベースの重低音とギターが唸る。
「あああああああああああああああああああああっっっっっはあッ!!」
ほなみのシャウトと連動するように、照明が光り輝いた。まだほなみたちに照明は当たっていない。後方から観客席の方へとぐるりと照明が移動する。シルエットだけのほなみたちが激しく立ち位置を変化させていく。ステージバックにはでかでかとトレーネの文字が踊り、脇からドンッと、紙吹雪が舞った。過剰な演出には観客席からの歓声。
やがて一番サビに入った。ステージ全体が一気にライトアップされて、シルエットだけだったほなみたちの姿が露わになる。ほなみたち側からも観客席がはっきりと見渡せる。
――お客さんは……!
数人がライブ会場を出て行くのが見える。恐らく他のメンバーも目にしているだろう。彼らは根っからのサドンデスファンではないのだろうか。サドンデスがバックバンドを務めるのにも関わらず、彼女らの活躍を見ていかないなんて。けれどもしかしたら、ボーカルのしょうこの大ファンかもしれない。でもそのしょうこがギターを弾くのに徹する機会なんてそうそうないだろうに。いいや、彼女の歌声が好きなのかもしれない。踊りながらも止められない思考の数々。
――そんなことは今どうでもいい!
――今いるお客さんをトレーネがどれだけ魅了できるかだ!
戦いの火蓋が切られた。
メタルナンバー神の怒りを終え、ノータイムでアップテンポなアイドルナンバー真夏の大恋愛計画へと移行。この曲でもサドンデスがバックバンドを務める。
初めてステージに立って理解出来たことは、レッスンの時よりも大幅に体力が持っていかれるということ。
「はあ、はあ……」
――しんどい……。
まだ一曲目なのに。
自分の歌が入らないパート、且つ振付もそこまで激しいものじゃないパートでもステージ上で立っているだけで体力を消耗していくのがわかる。
まず照明が熱い。ただステージを借りるだけなら、そうでもなかったのだろうが、イリスが費用を上乗せして、ライトアップを豪華にしたことで演出が派手なのに伴い、観客の熱気も上がった。それ事態はいいことなのだが、観客の熱気と照明の熱気、そこに激しい曲の激しいダンスが加わるとステージ上は灼熱と言っても差し支えなかった。オーバーヒートしそうだ。ゆづきは大丈夫だろうか。いや、その前に自分が心配だ。
観客が目の前にいる。普段の練習とは違う。精神的にも揺さぶりが掛かっている。
――あれ? 次の歌詞なんだっけ……?
熱気で頭がぼーっとする。
ダンスは身体で覚えている為、そう簡単には忘れない。
しかし、歌詞は飛ぶ。
つい先日。ライブ三日前のこと。
「いい? 途中歌詞忘れたり、振付忘れても焦らないでね? 万が一にもソロパートで歌詞忘れたらラララで誤魔化して。他は口パクで。踊り忘れたら立ち位置だけ気をつけといてね。無理に周りの動きを追い掛けず冷静にね」
ゆづきからメンバー全員に留意するように通達されたその言葉を、正直言ってほなみは今の今まで気にも留めていなかった。ここに立つまでは完璧だったのだ。
まだ二曲目なのに。
こんなにも簡単に起こり得る。
実感する。
ステージ。動画で見ていたそこが、まるで魔境のようだと思い知る。
――アイドルって凄い……!
――観客は……。
ほなみは観客を見た。一階席から二階席まで見渡す。
――ノッている。ノッてくれている!
リズムに合わせて身体を縦に揺らしている。前方にいる客などは身体を乗り出し、ステージと観客席を隔てるバリケードを壊さんばかり。
――いける。
自分たちはいけている。アイドルとして。今、やっていけている。
そうして、観客を見渡して気が付いた。
自分と瓜二つの顔がいることに。
つまり、第三世代だ。
同じ第三世代が自分を見に来ていた。第一世代より扱いにくい。年々社会から必要とされなくなっている私たち。そんなほなみの姿を見る彼女らの表情には一様に憧憬の眼差しがあった。
もっと見てほしい。もっと伝わってほしい。ほなみの歌と踊りを見てほしいと心から願う。彼女たちを後押しして、ほなみのように勇気付けられればいいと心から願った。
腐らないで。見渡せば、どんな場所に自分のステージがあるのかわからないのだから。
立ち位置がくらのと入れ変わった。右手後方から左手前方へ。
そうして、気がつく。
目の前には、ほなみの元教え子たちがいた。
「ほなみせんせー!!」
間奏で叫ばれる。
もう先生なんてやってもいないのに、自分があの頃のように彼女らの先生に戻っているような気がしてくる。そんな自分が歌って踊る姿を見られているようで少し気恥ずかしくなる。
二曲目が終わった。
さて、ここでMCだ。
サドンデスのしょうこ、らん、たまがステージ脇へとハケた。彼女たちの出番は次のメタルナンバーまでお預けだ。
幾人かの観客が帰って行くのが見えた。
ほなみは胸がきゅっと締め付けられるような感覚に陥った。ミュージシャンたちは、音楽フェスティバルでこんな気分を味わっていたのか。かつてのアイドルたちだって何度もこういう経験をしてきた筈だ。なんて辛い仕事なんだろうと思う。
「今日はトレーネのファーストライブに来てくれてありがとう!」
中央に立つイリスが観客に向けて手を振った。
「イリスさまー!」
「ガチでイリスさまなのー!?」
観客からの疑問の声が上がった。当然だろう。
テレビやネットでも騒がれていた。彼女の存在がこんな形で現れるとは思ってもみなかったはずだ。性格はアレだが、人間天使にとって彼女はもしかしなくともメンバーの誰よりも有名だ。
「もちろん! 私が人間天使のプロトタイプ、イリス・アイよ!」
堂々と彼女が宣言したことによって、ようやく観客も納得がいったのだろう。歓声が沸き起こった。
「ほんとーだよっ! もー! いきなりファーストライブでこんなでっかい会場押さえるとんでも人間天使なんてどこ探したっていないよ! もっとちっさい箱でやる予定だったんだからー!」
ゆづきがマイクを使って、イリスを面白おかしくイジる。
観客から笑い声が起こる。流石に場慣れしている。ほなみもくすくすと笑った。
「ハローぜっぷとーきょー! さっきもやったから、二度目ましてー! ゆづきだよ! 今日はこのままギター弾かないで最後まで歌って踊るから! 普段見れない貴重なゆづきを最後まで見ていってねー! そんじゃ次ー、ほなみん!」
ゆづきから振られる。
「……っぐぇ」
油断していたせいで変な声が出てしまった。ほなみが口籠っているとゆづきが「ほら、マイク入ってるんだから」とマイクを示した。
「え――っと……。第三世代のほなみです。最後まで聴いていってください」
教師として大勢の生徒の前で話した経験など何の役にも立たなかった。口の中が乾いて自分でも何を言っているのかわからない。会場内に反響する自分の声が自分じゃないみたいだ。大きな会場でマイクに乗せられた自分の声はこんなにも不安を駆り立てるものだったのか。今になって体育館で話していた同じ第三世代の校長を思い出してちょっと尊敬。
そんなほなみにも「ふぅー!」「かわいー!」と、会場で心温かい声が上がった。
次はもうちょっと上手くやりたいな、なんて思ってしまう。
「くらの」
イリスがくらのを促した。
「はい。皆様。初めまして。婦二倉(ふにくら)くらのと申します。以後お見知り置きを。ご質問も予想されますので、まず始めにお答えしておきますと、くらのは第二世代人間天使になります。ご存知かと思いますが第二世代は故障も多く、くらのも漏れなくその中の一人でした。そんなくらのが壊れて捨てられていたところをそこの村雨様に救って頂きました。もし、今後もアイドルを続けていけるのならば、同じ第二世代の仲間に出会ってみたいものです。……ああ。皆様。アイドルというモノをそもそもご存知ない方もいらっしゃるのではないでしょうか? くらのが生きている頃でギリギリだったので、会場にいる皆様が知らないのも当然です。ええ、ええ。お嬢様――イリス様くらいのお歳ならともかくお若い皆様は別に恥ずべきことではありません。そもそも、アイドルというのは人間が生きていた時代に栄えていたこの国における文化の一つです。その起源はと言えば一九六〇年代にまで遡ります。いえ、海外へ目を向けるとそこからさらに遡りますが――」
「ちょちょちょっ、くらのちゃん! 長い! 長い! 散々宣伝で新生アイドルグループって言ってあるから、たぶん大丈夫だって! みんな、アイドルがなんなのかなんて、てきとーに調べてるよ!」
アイドル文化の発足から解説を始めようとしたくらのにゆづきが待ったを掛けた。
「そうですか? では村雨さんどうぞ」
そのあっさりした引き際が受けたのかまた笑いが会場で起こる。くらのが首を傾げた。
ここまでは良い雰囲気だ。
やりとりを微笑みながら見守っていた村雨が一歩前に進み出る。
「……はい。えーと。どうも。村雨です。こうしてステージに立つことが出来て――」
「飴村ちゃーん!」「あめちゃーん!」
「へ?」
村雨が二階席付近から上がった声に固まった。
「村雨?」
どうしたのだろうか?
まるで魂が抜け落ちたかのようだ。声のした方をぼうと見上げてまるで動かない。
「……村雨ちゃん?」
会場が固まった村雨に変な空気になってきたのを察してゆづきが声を掛けた。
「飴村ー!」
また声が上がった。
――あめむら?
村雨→雨村。あめむら。それはすぐに分かる。ただそれが村雨にとってどういう意味を持つのかがわからない。
そして、会場全体が困惑に満ちている中、唐突に村雨の瞳から一筋の涙が零れた。
「ちょちょちょっ! どしたの!? 村雨ちゃん!? もう感動しちゃったの!? まだまだここからが長いよ!?」
変な空気になり始めた会場を察して、ゆづきが冗談混じりに突っ込みをする。
その突っ込みで我に帰ったのか、やがて村雨はぽつりぽつりと言葉を紡ぎ始めた。
「あ、ごめんなさい。え……っと。メンバーの皆さんには言ってなかったんですが、飴村って呼び方で思い出してしまって……たぶんその呼び方をしてるってことは」
「電子アイドルずからのファンでーす!」「あめちゃーん!」
また二階席から声が。
――電子アイドルず? ……って、どこかで聞いたような――……。
記憶を探る。つい最近聞いた。どこだったか。
「わーんっ!」
重なる会場からの飴村という声援に、今度こそ涙を止められなくなったのか、村雨は声を上げて泣いてしまう。
ゆづきがおろおろと村雨に駆け寄り、ポケットからハンカチを取り出して涙を拭った。
「ひっく。ひっく。ありがとうございます……実は……わたし、元、アイドルなんです」
初耳だ。
見れば、ほなみ以外のメンバーも驚いていた。
「電子アイドルずってグループ名で活動していて、その時は『飴村ちゃん』って名乗っていたんですけれど、人気さっぱりで解散しちゃって、」
やっと思い出した。
ネットでアイドルについて調べていたときに出てきたグループ名。
――人間天使によるアイドル。エンジェルリック、スピアーズ、電子アイドルず、などが挙げられる。しかし、いずれも長続きせず、電子アイドルず以降は、新たな人間天使のアイドルグループが生まれることはなかった。
人間がアイドルについて解説していたあの記事だ。電子アイドルず。幾つか載っていたアイドルグループの中に確かに名前があった。その最後のアイドルグループとやらが、村雨――飴村ちゃんが所属していたアイドルグループなのだろう。
「それから、アイドル文化も廃れちゃってえー! もー、アイドルなんて売れない、もー一生出来ないんだと思っててー! そしたら、ほなみさんに声を掛けられて……またステージに立てて……それなのにまだ昔のファンがいてくれたなんて……もう何十年も前の話なのに……」
まあ、正確に言えば、ほなみから声を掛けた覚えはないのだが。
人間天使によるアイドルを終わらせた存在。人間が築き上げてきた文化の一つを終わらせてしまった存在。その一人は村雨だったのだ。
――ずっと、抱えていたんだろうな……。
村雨の素顔を初めて見た時、とんでもなく愛らしい顔立ちをした子だなと思ったものだ。
これまでの村雨の不可解だった言動の数々も、昔アイドルとして活動していたと聞いた今となれば全てに得心がいく。
マイクや衣装をあんなに持っていたのもアイドル時代に使っていた物なんだろう。振付のクオリティの高さも、元々彼女が電子アイドルずの振付を考えていたと思えば納得がいく。
どんな最新の世代だろうと、人間天使にとって人間という存在は特別だ。ほなみには想像も出来ないが、その人間が育て上げてきた文化の一つを自分が途絶えさせてしまったという想いはずっと彼女の中に燻っていたのだろう。
だからこそ、あんなに必死だったのだ。
ゆづきの指摘にいの一番に同意を示したのは村雨だ。文句を垂れながらも、それぞれの特性に合わせて全員の振り付けを考えてくれたのも村雨だ。そうだ。違法行為に手を染めてまで、メンバー集めに協力し、くらのを復活させたのもまた村雨なのだ。
「ひぐ……ひぐ……ぐす……。すいません。取り乱しました! でも、今は! 飴村改めトレーネの詩家五村雨です! これから、よろしくお願いしますっ!」
村雨はそう言うと深々と会場に向かってお辞儀をした。
会場が盛大な拍手に包まれる。
二階席からは一際大きな「村雨ちゃーん!」という声が上がった。さっきまで「飴村」と呼んでいた彼らに違いない。
会場をもう一度見渡してみる。
よくよく見れば第一世代の子もいた。相変わらず喜怒哀楽のわからない無表情で突っ立っているだけだが、あの娘たちがイリスの友人だろう。もしかしたら、イリスに初めて会った時に一緒に歩いていた子たちかもしれない。
「あ」
この前の婦警もいた。ぽーっとイリスを眺めている。他にももしかしたら、イリスの元同僚の開発局の人間天使だっているかもしれない。なんだかんだ言って人望はあるようだ。
「じゃあ、気を取り直して次の曲! 人間がまだこの世界にいた頃、この国で大流行したあの曲をやるよー! みんなー! 準備はいいかなー!?」
一旦落ち着いてしまった会場を再び盛り上げるべくゆづきが煽った。
応えるように観客からの歓声が上がった。
四つ打ちのバスドラムが鳴り響く。それと呼応するかのように会場も跳ねる。
シンセサイザーの気持ちのいいデジタル音が響き、ほなみたちは慌てて配置に着く。
さあ、ここからラストまで。
一気に駆け抜けるんだ。
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