一体なんの冗談だ?

 俺は女性が苦手だ。

 できる限り関わりたくはない。





 やばーい、遅刻遅刻~。

 なんていうシーンは、恋愛漫画でお約束のシーンだが、俺は目覚まし通りに起き、朝ごはんを食べて、余裕をもって家を出る。

 大学に入学してからは、奨学金を貰いつつ、バイトをしながら、優雅に独り暮らしをしている。

 一人は楽だ。誰に気を遣うわけでもなく、遅くなるからと連絡を入れる必要もない。

 もちろん彼女もいないので、家に誰かが来ることもほとんどない。

 THE・一人だ。

 さて、少々自分について語ってきたが、これはある種の現実逃避であって、目の前の現実が変わることはない。


「……………むにゃ」


 さっきも言ったが、俺は大学に行くために家を出た。つまり外にいるわけで、絶賛、道を歩行中なのだ。

 なんで、道に女性が横たわっているんだ??

 しかも家を出た矢先。

 なんなら家のすぐ目の前。

 茶色の髪をゆわっと巻いていたようで、今もしっかり残っている。すげぇ。

 しかも「むにゃ」って。

 泥酔して寝てしまったらしい。

 なんでわかるかって?酒臭いからだよ。わかれ。

 なんだか見て見ぬふりして素通りするのも気が引けて、立ち止まったはいいものの、どうしたらいいかわからない。

 さっきから道行く人みんなに、好奇の視線を投げかけられている。

 みなさん誤解しないでください。この人は断じて俺の知り合いではありません。

 なんて心の中で叫んだところで、どうにもならないわけだが。

 この女性をどうするかと悩んだところで、時間が解決してくれるわけでもなく、葛藤すればするほど、大学に行くのが遅れてしまう。

 やれやれ。

 俺は一つ溜め息をつき、女性の上体を起こし、座らせる。

 失礼だとはわかっているが、意識のない人というのは、なんとも重い。あぁ、腰が。

 (一応言っておくが、おっぱいには触れぬように気をつけたぞ。)

 最後に、俺は持っていた未開封の水を女性の脇に置いて、大学へと向かった。





 そして大学が終わり、今日はバイトもないので、18時ごろに家に帰ってきた。

 さすがにもう、朝の女性の姿はなくなっていた。

 変な人に連れていかれてなきゃ良いけどな。

 まぁそんなのはフィクションの中ぐらいか。

 俺は鍵を取り出し、家の鍵を開ける。

 そして中に入ろうとしたとき、



ガチャ



隣のドアが空き、


「あ」


朝のあの女性が出てきた?


「もしかしてお隣さん?」

 イイエ違イマス。

「いやいや、今鍵開けてたよね」


 ジーザス。

 おい、ゴッド。なんの冗談だ。

 なんでこんな意味のわからんイベントを発生させるんだ。

 誰か助けてくれ。

 俺は女性が苦手なんだ。

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