どこに行けばよかったんでせうか

 俺は女性が苦手だ。

 空間に二人きりというには言わずもがな。二人でなくとも、女性がいるだけでなんとも気まずい。





「あれ?さっきの『先輩』じゃん?」


 助けてくれゴッド。俺が何をした?

 俺は食堂で、さっきのカノンちゃんとアミちゃんに出会っていた。

 事の発端、という程のことではないが、、、





「……………」


 部室に戻ってきたものの、何とも気まずい。

 コーヒーはもう全部飲んでしまったし、漫画を読むだけで手持ちぶさただ。

 それは那智さんも同じようで、イチゴミルクを飲み干してからは、チラチラとこっちを見てばかりだ。

 なんだ?コーヒーでもこぼしてるか?だとしたら恥ずかしいから言ってくれ。



キーンコーンカーンコーン



 どうやら2限が終わったようだ。

 いいタイミングだ。

 お腹も空いたし、何よりいいきっかけだ。

 俺は席を立った。ってところで那智さんが何やらカバンからあるものを取り出す。

 弁当だ。

 お弁当をあけると、中には、それそれは美味しそうなおかずが並んでいる。


 自分で作ったのか?

「いえ、おか…、自分で作りました!」


 …うん、そっか。


「…こ、今度、先輩の分も作ってきましょうか?」


 いや、大丈夫。

 なんか、色々と不安だし、後々「あの時弁当作ってあげたじゃないですか」とか言われても面倒だし。

 ってなわけで、俺は食堂に行ってくる。

 そんな一人にしないでー、みたいな顔をするな。昼休みは朋弥たちが来るから。もうちょっと待っとけ。





 っつーわけで食堂に来たら、この有り様だ。お昼の食堂は学生でごった返すはずなのに、なぜ見つかるんだ。やっぱりコンビニで買って部室に戻った方が良かったかな。

 いや、今からでも遅くない。計画変更だ。

「ちょい待ち」


 ん?俺か?


「先輩以外誰がいるん?」


 いっぱいいるよ、ここにはな。


「ちょっと花音ちゃん、先輩なんだからタメ口は」

「そんなこと言ってるのは日本だけじゃん?うち、クォーターだし?」

「でも、こんなんでも先輩なんだから」


 こんなんでもって。何気にアミちゃんもひどいよね?


「わかったよぉ。で、えーっと………」

 国ヶ谷だ。

「クニさんは、」


 いや、クニさんって。


「ひよりんのことどう思ってる感じ?」

 どうって、ただの後輩だよ。それ以上も以下もない。

「ホントに?」

 あぁホントだ。向こうに確認とってみろ。むしろ向こうは、俺を快く思ってないんじゃないか。

「それマジで言ってる?」

 嘘ついてどーする。

「……………」


 カノンちゃんは黙って、ジーっと俺を見つめてくる。

 やめろ、見るな。そういう視線には慣れてないんだ。やめてくれ。


「花音ちゃん?」

「はぁ、こりゃひよりんも大変だわ」

 あぁ、俺もそう思うよ。

「たぶん、クニさんとうちの思ってることは違うと思う」

 え。

「まぁいっか。悪い人じゃなさそうだし。うち、こう見えて人を見る目あるから?」


 なぜ疑問符をつけた。


「あみみん、行こっか?」

「え、花音ちゃん」


 何か向こうが勝手に話を終わらせてきたんだが。


「あんまりうちらが絡み過ぎても、ひよりんもいい気しないだろうし?」

「それは、そうかも」


 何がだ。


「あ、クニさん。ひよりん泣かせたら怒りますからね?」

 どこかへ行ってしまった。

 泣かせるも何も、関わる気もないんだが。

 にしても最後まで疑問符の多いやつだったな。

 しっかし、女の子二人に絡まれるとか、いつぶりだ?まったく、勘弁してくれよ。昼休みになっても、心がまったく休まらん。

 俺は女性が苦手なんだ。

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