選択を間違えてはいないかい?
俺は女性が苦手だ。
二人きりなんてのは気まずくて仕方がない。
ある意味地獄だ。
「お、奢りましょうか?」
結構だ。
飲み物を買いに自販機の前にきた、俺と那智さん。
部室で二人きりという状況に耐えられず出てきたはずなのに、なぜか今も二人きりだ。勘弁してくれ。
那智さんはいかにも女の子らしく、イチゴミルクを買おうとする。が、
「え゛」
なぜかブラックコーヒーがおはようと呼び掛けている。
苦手なのか?
「そ!んなことないです!コーヒーくらい飲めますよ!!」
見え見えじゃねーか。
しかもブラックだし。
イチゴミルクを買おうと思ってた子が飲むもんでもないでしょーに。
ほらよ。
「え?」
俺はコーヒーはブラック派なんだ。イチゴミルクと交換すりゃ一件落着だろ。
「あ、りがとう、ございます」
どういたしまして。
俺は受け取ったコーヒーを開ける。が、那智さんは、ボーッとイチゴミルクを見つめたまま動かない。
間違い探しでも描いてあったか?
さて、目的も達成したし、ここにいても状況は変わらん。戻るか。戻っても結局一緒だけどな。
「あれ?日和ちゃん?」
「え?」
………誰?
突如、目の前に現れた女子大生二人。
「
どうやらアミちゃんとカノンちゃんと言うらしい。
「ひよりんがこの時間に学校来てるとかマジ珍しくね?」
「うん。日和ちゃんはいつもギリギリに来るのに」
「あー、今日はたまたま早く起きたから」
「とか言ってぇ、実は?彼氏と?会いたくて?とか?」
うん。俺この子は特に苦手だわ。
カノンちゃんだろうか。セミロングの茶髪をしっかり巻いてでばっちりメイクをしている。あと疑問符が多い。
「え?日和ちゃん彼氏いたの?」
アミちゃんは、カノンちゃんとは対照的で、短い黒髪で清楚な感じだ。これはこれで、どう接したらいいかわからないから苦手だ。にしても、三者三様なグループだな。
「ばっかだなぁ。あみみん。後ろのパッとしないやつに決まってんじゃん」
失礼な。初対面で失礼だぞ。否定はしないが。
あと「あみみん」って言いづらくないか?
「え?あんな人が?」
失礼な。「あんな」呼ばわりは心外だ。否定はしないが。
こいつら嫌い。あ、いや、ごめんなさい。なんでもないです。
軽く睨まれた(気がした)のだが、女の子に反抗するとろくなことがないので、大人しくしておこう。年下相手に情けないとか言わないでね。
「そんなことない!」
ぅお。びっくりした。
「たぶん」
そこは自信持って?ねぇ?
「え?マジで彼氏なん?リアルに?マジで?」
「マジで」二回言ったな。あと疑問符が多い。
「そんなわけないじゃん。………」
うーん。なんだろう。事実だけど若干の悲しみ。
「だよね?焦ったー」
俺が彼氏じゃそんな都合が悪いか。まぁ、同意だけども。
しっかし、これまた居づらくなった。どうやってこの場を抜け出そう。
「あ、うちら、今から食堂行くんだけど」
「日和ちゃんもどう?たまには一緒に食べない?」
いいぞ。是非とも那智さんを引っこ抜いてやってくれ。おじさんと二人は可哀想だ。
「えーっと、私はいいや」
なぜだ。WHY?行けよ。行ってやれよ。俺のためにも。
「はっはーん?そういうことね」
「ち、違うから!」
「花音ちゃん、何が?」
「いいからいいから。ほらあみみん、いこ。ひよりん、また話聞かせろよ」
「だから違うって!」
二人はどこかへ行ってしまった。どこかって食堂か。しかし、疑問符と「ん」がうるさいやつであった。
さーて、また那智さんと二人になってしまった。那智さん、せっかくおじさんから逃げるチャンスを無下にするとはいただけない。
「えっと、戻りましょうか」
俺の平穏は、またしても訪れないようだ。
那智さん。この空気どうする?
俺?俺にはどうしようもできん。
俺は女性が苦手なんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます