第15話 狙われた理由

「助けて!」


 女の子はそう叫び、必死に男の手を振り払おうとする。


「こ、このガキ!?」


 男は強引にその子を抱え上げて立ち去ろうとするが、当然見逃すはずがない。シェルニとケーニルも同じ考えだったらしく、特にケーニルはその人並外れた身体能力であっという間に男へと追いつく。


「逃がさないよ」

「ひいっ!?」


 魔人族であるケーニルの睨みは……一般人には怖いだろうな。ダビンクに住む人たちはすっかり馴染んでいるのでなんとも思わないだろうが、よそ者はそうもいかないだろう。

 ケーニルの放つ圧を前にすっかり戦意を喪失した男――俺は背後から近づいてそいつの腕を掴み、なんとか捕らえることに成功した。


「な、何をしやがる!」

「それはこちらのセリフだ。あの子をさらおうとしていた理由を吐いてもらおうか」

「けっ! 誰が――いってぇ!」

「さらった理由は?」


 少し力を強めて再度尋ねる。

 さすがに男も観念したようで、自身の狙いを吐きだした。


「お、俺は頼まれただけだ! その子を指定された場所に連れていけば報酬をくれるっていうヤツがいたから!」

「誰だ、そいつは」

「し、知らねぇよ……ほ、本当だ! 別の町の酒場で飲んでいた時に女が声をかけてきてこの話を持ちかけられたんだ!」

「女?」


 少なくとも、この男に命じていたのが女性というのは発覚した。

 だが、それ以上のことは何も知らないらしく、嘘をついているようにも見えなかったので、とりあえず駆けつけた自警団に身柄を預ける。

 さて……問題はここからだ。


「君の名前は?」


 俺は女の子に名前を尋ねてみる。


「私は……レラーヌと言います」


 素直に名乗ったが、さらに彼女は続けてこう話した。


「私は狙われているんです。魔王を倒した強い魔剣使いの商人様に助けてもらいたくてここまでやってきました」

「狙われている?」


 それはさっきの男の行動からも察せられたが……どうして普通の女の子であるレラーヌが狙われたんだ?

 疑問に思っていると、そこにフラヴィア、レクシー、ザラの三人が合流。

 ――と、女の子を視界に捉えたフラヴィアの表情が一変した。


「この子は……」


 顔見知りというわけじゃなさそうだが、一体何に気づいたんだ?

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