第13話 捜索開始
俺から買いたい物があると、店を訪ねてきた謎の少女。
まだダビンク内にいるらしい彼女を手分けして捜してみることになった。
俺はシェルニとケーニルを連れて町の南側と西側へと足を運ぶ。さすがに昼過ぎともなると朝市の賑わいはなくなり、落ち着いた空気が流れていた。冒険者たちの多くは職場であるダンジョンに足を運んでいるし、商人たちにとってはようやくひと息入れられる安らぎの時間帯と言える。
なので、人を捜すのも朝よりずっと楽だ――と、考えていたのだが、
「それらしい子は見当たらないなぁ」
同じくらいの年齢をした女の子は何人か見つけたけど、残念ながら目的の子ではなかった。他にも知り合いへ聞き込みをしてみたが、有力な情報を得ることはできず、手がかりすらない状況だ。
「ひとりで町にいるなら――そうだ! 宿屋に寄ってみてはどうでしょう!」
「なるほど……そいつは名案だな」
さすがはシェルニ。
いいところに目をつける。
仮に、十歳前後の女の子が野宿でもしていたら、町の自警団が気づいて保護しているはずだし、それがないということはどこかで宿を取っている可能性が高い。
となると……あの人の店を訪ねてみるか。
俺はケーニルとシェルニを連れて、ある場所へと向かった。
そこは、
「あっ! ディンゴさんのお店ですね!」
「その通り。あの人なら、何か知っているかもしれないだろ?」
ディンゴさんは、まだ本格的に商人としての仕事を始める前に俺やシェルニが世話になった宿屋の店主だ。
自分の店を持つようになってからは宿屋に泊まることもなくなったので顔を合わせる機会は減ってしまったけど、今でも付き合いは続いている。
というわけで、早速お店へと足を踏み入れた。
「いらっしゃ――お? 珍しい客だな」
ロビーで掃除をしていたディンゴさんは、来店したのが俺たちだと知ると手にした雑巾をバケツへ放り投げて歩み寄る。
「シェルニもケーニルも久しぶりだな」
「「お久しぶりです!!」」
「ははは、いつも元気でいいことだ。――で、今日はまたどうした? フラヴィア嬢と喧嘩でもして追いだされたか?」
「違いますよ」
相変わらずだなぁ、この人は。
それはともかく、俺たちは捜している女の子の特徴をディンゴさんへ伝える――と、
「ああ、その子ならうちに泊まっていたぞ」
「そうなんですか!?」
まさかの超有力情報をゲット――したと思ったのだが、
「ただ、今朝になって急に出ていったよ」
「急に? 何か理由は言っていましたか?」
「いや、特に何も聞いちゃいないが……そうそう。実は父親が迎えに来ていたんだよ」
「父親……」
どういうことだ?
もしかして、親に黙って出てきたっていうのか?
「……その子が泊まっていた部屋はどこですか?」
「ちょうどこれから掃除をしに行こうと思っていたんだよ。一緒に来るか?」
「ぜひ」
妙な胸騒ぎがして、掃除道具を持ったディンゴさんとともに女の子が泊まっていた部屋へと向かい、手がかりを探ることにした。
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