第12話 町巡り

 俺から何かを買いたくて店を訪れたという謎の少女。

 残念ながら、彼女がこのダビンクへ足を運んだ時、俺はみんなと世界を回る旅をしている最中であった。


 そのため、すれ違いとなってしまったわけだが……店主の話によると、その女の子は現在もこのダビンクのどこかにいるはずだという。

 ただ、行方自体は知らず、たまに町で見かける程度だということなので、


「こういう時は……やっぱり、あの人に頼るしかないか」


 脳裏に浮かんだのはギルドマスターであるザイケルさんだった。

 彼ならば、その少女について何か知っているかも。


 とりあえず、今日はもう遅いし、明日改めてギルドを訪ねてみるか。



  ◇◇◇



 翌日。

 俺たちが久しぶりにダビンクへ帰ってきたという噂を聞きつけた冒険者たちで店は朝から大賑わい。

 商人として、これはとても嬉しいことではあるのだが……どうにも、俺は食堂の店主が話していた女の子のことが気になって仕方がなかった。


 店主の話では、たったひとりで俺を訪ねようとしていたらしい。彼の言う少女の特徴から、まだひとりで町をウロウロできるような年齢ではなさそうだが……どうも両親と一緒というわけではなさそうだ。


 そんな彼女は、一体何を求めて俺のもとを訪ねたのか。

 俺は朝の忙しい合間を縫って、店に来てくれた冒険者たちにその女の子を知らないかと尋ねて回った。

 すると、意外な事実が発覚する。


「その子なら、さっき別の商人と一緒にいるところを見たぞ」

「えっ!?」


 別の商人――もしかして、俺と偽り、少女に近づいたとかじゃないよな?

 今でこそ治安が安定しているダビンクだが、俺がこの町に来た時はまだ奴隷商が裏で蔓延っていた。シェルニも、そいつらに売られそうになっていたんだよな。


 ……ただ、あの頃とは比較にならないくらい平和になったとはいえ、どんなヤツが潜んでいるか分からない。

 とにかく、まずはその子を捜してみるとするか。



 昼前になり、冒険者の多くがダンジョンへ向かって客足が減ってきた。

 その間に「閉店」の看板を掲げる。

 今日のところは、ちょっと早めの店じまい。午後からは例の女の子を捜すため、ダビンクの町を回ることにしたのだ。


 とはいえ、これは難航しそうだ。

 何せ、俺たちはその子の顔も名前も知らない。

 食堂の店主や来店した冒険者たちから集めた情報に合致した子をこの大きな商業都市から捜しだす――確率で言ったら、めちゃくちゃ低いんだろうな。


 まあ、俺たちが戻って来たって話はそのうち広まるだろうから、彼女が店を訪れる可能性も十分あるけど、できれば早い方がいいだろう。


「さて、その子はどこにいるのかな……」

「小さな女の子がいるところというと――中央広場でしょうか」

「確かに小さな子が多いですけれど……あそこはどちらかというと遊び場という感じですし、わたくしたちに用があるならもっと情報が集められそうな場所にいるかもしれませんわ」

「ふむ……なら、ふた手に分かれるとするか」


 そう提案し、早速実行する。

 見つかればいいんだけどなぁ。

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