第10話 ダンジョンの奥には……
ダンジョン最奥部で発見した、違和感まみれの壁。
ここを破壊すれば、新たな道を発見できるかもしれない。
「ケーニル、頼むぞ」
「任せて!」
魔法縛りの状態だと、人間にこの壁を破壊するのはよほど強力な武器とそれを扱える技術+筋力がなければ難しい。レクシーのようなワイルドエルフくらいならやれるかもしれないが、ここは確実性を重視して魔人族であるケーニルに任せる。
「はあっ!」
ケーニルの右ストレートが、岩壁を捉える――直後、凄まじい衝撃とともにガラガラと音を立てて壁の一部が破壊された。
「相変わらずお見事なパワーですわねぇ」
「ホントね」
「す、凄いです……」
呆気にとられるフラヴィア、レクシー、シェルニ。
その横ではザラがキラキラと輝く尊敬の眼差しを向けていた。
「さあ、新しい道ができたよ!」
得意げな表情でそう告げたケーニル――って、新しい道?
彼女の言うように、破壊された壁の向こうにはさらに奥へと続く道ができていた。どうやら、ここはまだ最奥部ではなかったらしい。
俺たちは慎重にその道を進んでいく。
すると、意外と早くさっきよりも広い空間へと出た。そこに広がっていた光景を目の当たりにした俺たちの足は、ピタリと止まる。
「な、なんて迫力だ……」
そこには大きな滝があった。
ダンジョン内部に滝とは……あまり見かけない風景だな。以前、地底湖のあるダンジョンには足を運んだことがあったけど、そこに滝が加わるとより神秘的な雰囲気が増している。
「なんだか、涼しげでいいわね」
「はい。泳ぎたくなっちゃいます!」
シェルニがそう言ってしまうのも無理はないな。俺だって第一印象は「泳いだら気持ちよさそう」だったし。
ただ、ダンジョンの地底湖と聞くと、やはり最初に疑ってしまうのは――モンスターの有無だろう。地底湖は透明度が高いため、どんな生物がいるか大体把握できるのだが……ここはちょっと状況が異なる。
「かなり深いようだな」
「だね。水は透明だけど、底の方は暗くてよく見えないよ」
俺とケーニルは湖面を覗き込みながらそう呟く。
しかし、底の見えない湖っていうのは得体の知れない怖さがあるな。なまじ透明度が高くて水中の様子が分かりやすいから、恐怖心が倍増するよ。
その後、地底湖周辺をくまなく調査してみたが、それ以上の発見はなかった。
地底湖と大きな滝。
とりあえず、報告できそうなのはこれくらいか。
あと忘れちゃいけないのが――このダンジョンのトラップについて。
魔法を使用した途端、一度外へ出ない限り攻略は不可能となる。ここさえ注意すれば問題ないんじゃないかな。出現するモンスターも特別強かったり厄介な特性を持った者はいなかったし。
「よし。そろそろ引き上げよう」
みんなにそう呼びかけて、俺たちはダンジョンを出る支度を始める。
こうして、実に久しぶりとなるダンジョン探索は終了したのだった。
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