第9話 魔法縛り
魔法縛りによるダンジョン探索――これはまったく新しい試みだ。
しかし、そうでもしなくてはこの難関ダンジョンを突破できないと判断した。
魔法を主な戦闘手段とするフラヴィアはもちろん、精霊使いのザラや回復魔法を得意とするシェルニも行動が制限される。当然、魔剣使いである俺も、今はただの剣士だ。
「ここから先は頼んだぞ――レクシー、ケーニル」
「任せない!」
「安心してついてきて!」
こうなると、頼みの綱は格闘戦を得意とするレクシーとケーニルになる。
レクシーは武器の扱いに長けており、ケーニルは元魔王軍の中でも屈指の格闘家。どちらも魔力の影響を受けずに戦える。
この状態でダンジョンを進んでいくのだが……改めて、俺たちは魔法に頼り切りであったのだなぁと実感させられた。
何せ、わずかでも気を緩めると魔力に頼ろうとしてしまうのだ。
それは俺だけでなく、他のメンバーも同じだった。特に、魔法使いとして活躍してきたフラヴィアにとっては苦痛極まりない事態だろう。現に、なんだかこの短時間のうちにやつれてきているように見える。あれはかなりストレス溜まっているな。
「大丈夫か、フラヴィア」
「え、えぇ……へっちゃらほほいですわ……」
まったくもって大丈夫そうじゃない。
とはいえ、これがこの新しいダンジョンの謎を解く突破口となるのは間違いなさそうだった。
なぜなら、さっきまではすぐに入口へと戻っていたにも関わらず、未だに違った道を歩き続けられている。道中、モンスターと遭遇することもあったのだが、レクシーとケーニルの実力であれば一撃で葬り去れる程度ばかり。
順調に進み、ついにダンジョンの最奥部と思われる開けた空間にたどりついた。
――が、そこは思いもよらぬ場所だった。
「? 何もないのか……?」
辺りを見回しても、トラップらしい物は見えない。
本来なら、ここで探知魔法をかけて異変がないかどうか調べるのだが……ここで魔法を使ったら何が起こるか分からない。そういう恐怖もあったため、俺たちは足で情報を集めることにした。
「二手に分かれて周辺を調査しよう。フラヴィア、もうひとつのチームは君がリーダーを務めてくれ」
「分かりましたわ」
そう呼びかけて、早速チーム分け。
俺と一緒に探すのはレクシーとザラ。
フラヴィアのチームはシェルニとケーニルがつく。
「よし。それじゃあ、何か発見したらすぐに仲間を呼ぶように」
最後にそう伝えてから、それぞれ西と東に別れて探索を開始した。
魔力なしでの探索――これが意外と苦労の連続だった。改めて、普段どれだけ魔力に頼っていたのか……痛感させられるよ。
難しさもそうだが、モンスターの存在も探知できないというのがなかなか厳しい条件だった。確かに、これまでは雑魚と呼んで差し支えないレベルしか出てきていないが、だからといってここも安全圏とは限らない。
むしろ、最奥部という環境を考えたら、ここにとんでもない大物が隠れていても不思議ではないのだ。
あらゆる面に注意を払いながら、辺りを探索していくと――
「うん?」
俺はある違和感に気づく。
それは岩壁の一部にあった。
なんでもない岩肌に見えて……一ヵ所だけ、明らかに他と色合いが異なる場所があったのだ。
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